ホーム(H)   ご感想/ご投稿 ' 05/08/31   H'80Web
Tackお薦め本&レビュー
H'80Webブックレビューの「裏版」です(^-^;)。ひこ〜きに関係ないTackお薦め本をご紹介。The Beatles版を別にしました!

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ISBN
05/08/31 花を売らない花売り娘の物語―ハイタッチ・マーケティング論 権八 成樹/著 光文社/1000円 ★★★★★
▼もの凄く面白いマーケティング論と人生論。
IBMのコンサルという経歴からは想像できない、講談のような調子のいい文体で、共感と驚きの「ハイタッチ・ワールド」にグングン引き込んでくれます。
どこまでも、「切れば血の出る」ひとり同士の出会いと紲を大事にし、面白半分を廃した「面白全部」の仕事を標榜します。
「花屋さんは花を売っているのではない、花を贈る喜び、もらう感動を売っているのだ!」という、人間を愛する熱き賛歌は、仕事に疲れてきた頭と体に元気を呼び覚ます秘薬だと思いました。
マーケターだけでなく、どんな人にお薦めできる楽しい一冊です。
05/08/09 ユーザーイリュージョン―意識という幻想 トール ノーレットランダーシュ/著 紀伊国屋書店/4200円 ★★★★★
▼「<私>という意識はユーザーイリュージョン=錯覚である」
「マックスウェルの魔物」という熱力学の話題から入り、情報理論、ゲーデルの定理、カオス理論、心理学、脳/神経化学、そして宗教、宇宙論、ガイア理論、コンピューター・ウィルス、フラクタル、政治、核戦争。
還元主義を批判する著者だけのことはあり、ありとあらゆる面から、心と世界の謎に切り込んでいきます。
しかもこれらがつまみ食いのオムニバスではなく一本につながって、「人類のこれから生きる道」に修練していくのだから見事です。
科学も意識も情報を捨て単純化することによってしか世界を表現できない、しかし傲慢にも全てを把握しているとカンつがいしている―このことを謙虚に理解することが、人智を次のステップに持ち上げるために必要なのだと思います。
我々が全幅の信頼を置いている(?)<私>の意識はたったの40bpsの帯域幅しかなく、各種感覚器官からの11Mbpsの情報量に比べると、圧倒的に小さいなど、各分野の興味深いエピソードが多数紹介されています。
これだけの内容を含む500ページの大著で、難解な部分もないとは言えませんが、科学や心に興味のある方なら、チャレンジする価値は十分あります。ぜひお薦めの快著!
05/05/01 [DVD] サンダーバード (2004年劇場公開版) ビル・パクストン他 ユニバーサル/3465円 ★★
▼トレーシー一家が運営する国際救助隊サンダーバード。末っ子の高校生アランは、もう一人前のつもりが入隊を許されません。しかし、フッドの陰謀により隊全滅の危機に。アラン、ファーマット、ミンミンが奮闘します。
伝説的マリオネーションを最新の特撮で再現。冒頭の救出劇など、あの1号、2号がビュンビュン飛び回る場面は感動です。
ただ、あくまで子供映画ですので、期待して見ると肩すかしを食らうかも。とにかく主要隊員は全員宇宙の5号に缶詰になっているし、追いかけっこばかりでメカの活躍するシーンも少ないです。
代わりにレディ・ペネロープとパーカーが大活躍。雰囲気出ています。
05/05/01 [DVD] ブルース・オールマイティ ジム・キャリー, モーガン・フリーマン他 ポニーキャニオン/3990円 ★★★★
▼地方局のレポーター、ブルース(ジム・キャリー)。人を笑わせる才能の持ち主で、素敵な彼女(ジェニファー・アニストン)にも恵まれている。でもライバルに昇進を奪われ、爆発して神様に当たり散らします。
ちょうどバカンスに出たかった神様(モーガン・フリーマン!)は「そんなに言うなら、やらせてあげるよ」とブルースに全権委任。さっそくオールマイティ・パワーを使ってライバルを駆逐するのですが、彼女に去られた上に「神の本業=人々の祈りをきく」をサボったツケがまわり、街は大混乱に…(彼女とのムードを高めるために月を近づけてしまい、影響で日本が大洪水に見舞われるなんてのは、今やかなりブラック!)。
強烈なおバカの中に「大事なもの」を表現するキャリーの魅力は相変わらず。それにフリーマンの軽妙な神様とアニストンが絡んで、笑いと感動のバランスが取れています。神は万能だが、人間の「自由意思」は操れないとする設定が絶妙。
DVDでは、エンディングのNG集と、キャリーのアイディア機関銃ぶりを伝えるメイキングも必見です。
05/04/30 [DVD] クレイマー、クレイマー  ダスティン・ホフマン, メリル・ストリープ ソニー/2090円 ★★★★
▼やり手広告マンのテッド(ダスティン・ホフマン)。念願の大きな仕事を獲得し昇進も目前なのに、突然奥さん(メリル・ストリープ)に逃げられます。仕事に夢中で彼女の苦悩を無視し続けてきたのです。苦手な子育てと仕事を両立しなければならなくなったテッドは大苦戦しながらも、徐々に息子への愛に目覚めます。しかしそんなある日、奥さんが現れ「子供を引き取る」と訴訟を起こします。
どちらにも非もあれば情もある状況での審理の場面が痛々しかった。弁護士が繰り出す辛辣な質問に、両者が動揺して相手を慮る。日頃から互いを理解していればこんな羽目に陥らなかったのに、という後悔。
とにかくホフマンの演技が素晴らしい。身勝手振り、苦悩振り、そして悟りと全てが絶妙。アカデミー賞は伊達じゃないな〜、と改めて思わされました。
05/03/13 頭がいい人、悪い人の話し方 樋口 裕一/著 PHP新書/750円 ★★★
▼斎藤隆『声に出して読みたい日本語』などの日本語本が流行っている流れか、いきなりベストセラーになっていた本書、ちょっと立ち読みしてみたら面白そうだったので入手したのだけど、やや看板倒れの感。
頭の悪そうな話し手の例をこれでもかこれでもかと挙げてやっつけていて、それはそれで「あー、あいつはこのタイプだ!」など痛快。でも、対処法といっても「避ける」とか誰でも考えつく陳腐なものばかりだし、結局は「ダメな話し手リスト」で終わってしまっている。それも、重複が多くて無理矢理な例も多し。
  これは新書の方には当てはまらないと思うけど、私が読んだ電子ブック版は、誤植、しかも一目でワープロの変換ミスとわかるものが目立った。もしかしてデジタルデータがなくて、誰かが本を打ち直して作ったのかしらん? それにしても、このテーマの本で誤字脱字連発というのは、恥ずかしいにもほどがあるぞ!
05/02/13 ネタの種 (情報管理ソフト) ジャストシステム /2520円 ★★★★
▼興味のあるWeb上のニュースなどを、ブラウザでブックマークで管理したり、「名前を付けて保存」でファイル化している方も多いと思います。
それを、ブラウザ(IE)の右クリックで簡単に行い、結果をテーマごとに整理したり検索できるソフトです。
大変軽く操作もシンプルなので、ネタ帳としてオススメです。
元々はユミルリンクという会社が作った『紙copi』というソフトで、一太郎連携の機能が追加になり、デザインが多少変わっている他は、同一のものです。『紙copi』はサイトからお試し版がダウンロードできますので、興味のある方はそちらをご覧になるといいでしょう。
http://www.kamilabo.jp/
04/12/26 「Jリーグ」のマネジメント―「百年構想」の「制度設計」はいかにして創造されたか 広瀬 一郎/著 東洋経済新報社 /2520円 ★★★★
▼タイミングと人がうまくマッチしたことで、今までの日本にない成功を見たJリーグ。その成功要因を、データと関係者へのインタビューでクールにまとめた一冊です。
Jリーグの分析もさることながら、ロス五輪前後から一気に広がり、ISLの破綻などにつながるスポーツ・バブルにも大きく紙数を割いており、プロ野球騒動に揺れた日本のこれからのスポーツ・ビジネスを追う上で、大変参考になる論文だと思います。
面白いのが、広瀬氏はJリーグが企画された当時、電通のスポーツ・ビジネス・プロデューサーとしてW杯やトヨタカップ等のサッカーに大きく関わっていたにもかかわらず、Jリーグのプロデュースは博報堂が担当することになり、開幕を客席で忸怩たる思いのもとに見つめたそうです。
「百年構想」の名の通り、目前の利益拡大だけを追い求めるだけではなく、世界の中での日本の位置をどう考えていくのか、スポーツ以外の分野においても重要となるコンセプトが示されています。
04/12/13 日韓ワールドカップの覚書 川端 康生/著 講談社 /1680円 ★★★★
▼サッカー関係者さえ「あり得ない夢物語」と本気にしなかった、日本でのワールドカップ開催。
そんな時代に、本当にW杯を招致してしまった男がいました。まずその物語が素晴らしい。
予選すら突破できない全日本の実力と、その原因も言えるプロリーグの不在でしたが、それをJリーグという形で一気に解き、いよいよ…という時に、今度は強力なライバル・韓国が立候補してきます。政界・財界を活かして猛攻をかける韓国の招致活動は、国際サッカー連盟の内紛に飛び火。ついに、"ルールになかった"共催という強行解決が図られるのです。
ここまでの苦難も小説を超えるドラマなのですが、さらに、前代未聞のW杯共催を実現するための激闘が始まるのです。
サッカー、野球、ラグビー…これからの日本のスポーツ文化がどうなるのか、まさに揺れ動いています。しかし、このW杯挑戦の記録は、日本の底力を証明してくるとともに、逆に日本から世界に提案していきたい、そんな心強い気持ちにしてくれます。
関係者への取材を元にしつつ、ドラマ仕立てで大変読みやすく、サッカーだけでなくスポーツに興味のある方にオススメしたい一冊です。
04/11/05 「超」時間管理法2005 野口 悠紀雄/著 アスコム/1800円 ★★★★★
▼超」整理手帳もついに10年目ですね。祝!こういったギミックもので、一瞬だけ流行って、せっかく使っているのにいつしかたち消えてしまうモノも多いですが、10年、毎年改良を続けてユーザーを増やしているのは素晴らしいと思います。
手帳自体は首尾一貫。スケジュール一覧性重視、切れ目のない押し出し式のシート方式、カンガルーホルダによるユーザー独自リフィルのサポート+A4サイズ採用など、PCと組み合わせた工夫好きの人にお勧めしたいコンセプトです。
反面、1日一葉でギッシリ書く用途には不向きですし、縦長で収容性の悪さを感じる人もいると思います。
使い続けている人はこの「スペシャル版」を買う必要はなくて、スケジュール・シートだけ追加購入すればいいはずなんですが、ついつい買ってしまいます…。
公式サイトも、使い方や周辺ツール情報が充実しています。
04/11/03 REGISTA サッカー・ボードゲーム グラパックジャパン/2079円 ★★★★
▼Amazonでボードゲームも扱い始めたので、さっそく利用してみました。
昔流行った6角形のマスの「ウォーゲーム」に、サッカーの雰囲気をうまくミックスしたボードゲームです。
サッカーの「リアルなシミュレーション」ではありません。緻密なパズル的な楽しさを、サッカーのルールに組み合わせて、ゲームとしてのバランスを巧妙にとっていると思います。
プレイは将棋のように交互にコマ(選手)を動かす形で進められ、1回に動かせるのは2コマまで。ただし、条件にあっていれば何回でもパスを通せますので、予めコマをうまく配置すれば、一気にサイドチェンジしたり、ロングパスからボレーシュート、などのサッカーらしいプレイを展開することもできます。
ルール的には荒削りな感じもありますが、利用者がルールを変更・改良して、より面白くなるように試してみたりもできるでしょう(例えば選手ごとにスピードやパスの正確性を変えてみたり、DFラインだけは2コマの制限とは別に一気に上げることができるようにする、など)。
そんな可能性を秘めた面白いゲームだと思います。サッカー&パズル好きの方にオススメ!
公式サイトにルールの概要などが載っていますので、購入前に参考にするといいでしょう。http://www.regista.info/
04/06/03 宇宙人としての生き方―アストロバイオロジーへの招待― 松井 孝典/著 岩波新書/777円 ★★★★★
▼宇宙人の目から、地球をシステムと捉えたらどのように見えるか。人類が「人間圏」を作ったことによる人口問題や環境問題などの「文明のパラドックス」を"人間中心でない"アストロバイオロジーで解いてみたら…。
2004年5月に開催された「ほぼ日刊イトイ新聞」主催のイベント『学問は驚きだ』で松井孝典氏の講演を聞き、そのあまりの面白さに入門編の本書を読んでみました。200ページの新書に、非常に興味深い「ものの見方」がちりばめられており、より深く学んでみたくなります。
「人間圏」以前の1万〜10万倍の時間の進み方(例えば自然の進化に対する遺伝子操作)にまで至り、「右肩上がり」幻想の暴走状態に入ろうとする人類を、科学と哲学を融合させ、導いていくヒントが本書には提示されているように思います。
04/06/01 今日はなぞなぞの日 フジモトマサル/著 平凡社 /1260円 ★★★★
▼「ほぼ日刊イトイ新聞」で私を大いに悩ませてくれたなぞなぞが単行本になりました。Webで公開されたものに加えて、新作も含まれていますので、読者でも楽しめます。
「ほぼ日」連載時は火曜日に出題されて金曜日に回答が出るという形で、問題によっては大変苦しみました。本の場合は、とにかく簡単に答えを見てしまわないように、自制心が重要になりますね。
私は比較的この手のダジャレ系なぞなぞは得意な方ですけど、相当ひねったものがありますよ。この難易度はどちらかというと大人向きだと思います。
ただ、無理のあるような答えは皆無ですから「わかった!」と閃いたときはだいたい正解であるという、正統派(?)の問題ばかりです。
動物のイラストもとてもかわいく、プレゼントなどにもお薦めの楽しい一冊です。
04/05/23 ゾウが泣いた日 坂本 小百合/著 祥伝社 /1260円 ★★★★
▼「市原ぞうの国」そして「勝浦ぞうの楽園」を運営している動物プロダクションの坂本小百合さんによる、ぞうたちとの出会いや暮らし、そして別れを描いた心温まるエッセイです。
最近出たもう一冊の著書『ちび象ランディと星になった少年』と重複する部分もありますが、そちらが亡くなったご長男・哲夢さんが主役なのに対して、『ゾウが泣いた日』はあくまでぞうたちが中心。あわせて読むとさらに感動が深まります。
坂本さんのぞうたちには、TV-CMなどでたくさん会っているんですね。映画『子象物語』がDVD化されていないのが残念ですが、いつか観てみたいです。
04/05/15 ちび象ランディと星になった少年 坂本 小百合/著 文春ネスコ /1365円 ★★★★
▼「市原ぞうの国」そして「勝浦ぞうの楽園」を運営している動物プロダクションの坂本小百合さんによる、長男・哲夢さんの象使いへの挑戦を描いた哀しくも温かいドキュメントです。
まるでドリトル先生のように、動物とテレパシーで会話できるかのような哲夢さんが、タイで本格的な象使いの訓練を受け、やんちゃな象・ランディたちと友情を深めていきます。
複雑な家庭事情を乗り越え、日本一の象使いへの道を歩みながら「日本の全ての象を幸せにする」夢に向かって行く哲夢さんですが…。「市原ぞうの国」に行って、象たちに会ってみたくなる、感動的な一冊でした。
04/05/04 [DVD] クラッシュ 奥山和由/監督 東映 /4935円 ★★★★
▼1998年5月3日、雨の富士スピードウェイで炎上事故を起こしたレーサー、太田哲也さんとご家族の苦闘を描いたドキュメンタリーです。
書籍『クラッシュ』『リバース』で太田さん自身が記した世界を、映像でバックアップするような感じになっています。
事故シーンや復帰に挑戦する姿などは、やはり映像の力です。でも絶望と希望が錯綜する闘病の苦しさ、それを乗り越えさせたご家族の愛情を深く感じるのには、ぜひ併せて書籍を読んでいただきたいと思います。
04/04/20 アホの壁 in USA マイケル・ムーア/著 柏書房/1680円 ★★★★
▼本書の原著"DOWNSIZE THIS!"は1996年発行ですから、同じマイケル・ムーアの『アホでマヌケなアメリカ白人』"STUPID WHITE MEN"(2001)、『おい、ブッシュ、世界を返せ!』"Dude, where's my country?"(2003)よりもずっと古い本。 日本でもムーア人気が盛り上がったので、さかのぼって出版されたのでしょう。
クリントン時代のネタがほとんどで、出てくる政治家の名前もそれほど馴染みがないので、今ひとつピンと来ませんでした。
しかし、嬉しいことに著者から最新の序文、それもちゃんと日本人の読者向けのものが届いており、これを読むだけでも本書の価値があるかもしれません。
それは冗談として「リストラすると株価が上がり、経営陣が肥え太る」「さんざん優遇された挙げ句、海外に工場を移転して城下町を見捨てる」といった、アメリカ式究極資本主義への指摘は、日本も無縁の話ではない恐ろしくも興味深いところです。
04/04/11 文章王―プロ編集者による文章上達秘伝スクール〈2〉 村松 恒平/編 メタブレーン/1575円 ★★★★★
▼人気メルマガをまとめた、「モノを書く」ことについてのQ&A集第2弾です。
第1作へのコメントはそのまま当てはまり、「迷える子羊」はおろか、「ちょっと暴走しているんじゃないか?」「大丈夫かコイツ?」というような質問も取り上げ、時に厳しく、また愛を持って応えていく村松氏の姿勢に感激します。

マンネリどころか、以前の問答を踏まえた議論や、村松氏の回答に対する質問者の返事などインタラクティブ性も高まり、終わりのない「表現の道」をたくさんの人とともに追求する村松氏の戦いに、ますます期待してしまいます。
元となっているメルマガのあるサイトはこちら。「文章が上達する学校
04/04/11 言いまつがい 糸井 重里/編 ほぼ日ブックス/1565円 ★★★★★
▼「ほぼ日刊イトイ新聞」から、また禁断のベストセラーが出ちゃいました!
読者投稿で集めた日常の「あらら」発言というネタは、昔ながらの定番なんですが、ネット時代の連絡網によって集められて、ほぼ日スタッフが厳選した新鮮なネタの数々が魅力です。
しかもソブエシンさんによる、本屋泣かせのいびつな装丁。まさに暇つぶしの時間を華麗にショーアップしてくれる楽しい一冊です。
その上、ほぼ日サイトを見れば、毎日新たに届く必殺の「言いまつがい」が増殖しているのです!
休憩時間の潤いに、職場の活性化に、ぜひオススメの逸品です 。
04/03/28 プロ編集者による文章上達秘伝スクール 村松 恒平/編 メタブレーン/1500円 ★★★★★
▼人気メルマガをまとめた、「モノを書く」ことについてのQ&A集第一弾です。
「コミケからプロになれるか?」「自費出版の真実」といったプロを目指す人の興味深い質問や、「インタビューの仕方」などの実践的なテクニックを交えて、「オリジナリティーとは何か」という村松さんのテーマがどっしりと腰を据えています。
快刀乱麻な回答ぶりは痛快。でもそれと同時に、質問を投稿してくる迷える子羊への愛がにじみ出て、じわっとさせてくれる、まさに村本さんのオリジナリティーが発露した問答の数々を楽しめます。
ネットによって、文章を書く人は増えているのかもしれませんが、プロを目指す人もアマにとどまる人も、一度触れてみることをぜひオススメしたいおトクな快著です!
続編も出ています。『文章王―プロ編集者による文章上達秘伝スクール〈2〉
元となっているメルマガのあるサイトはこちら。「文章が上達する学校
04/01/21 未来をつくった人々―ゼロックス・パロアルト研究所とコンピュータエイジの黎明 マイケル ヒルツィック/編 毎日コミュニケーションズ/2800円 ★★★★★
▼パソコン通を中心に有名なゼロックス・パロアルト研究所。1970年代に超天才科学者たちが集い、ウィンドウとマウスによるオペレーティング、イーサネット、レーザープリンタ、ノートパソコン、DTPなど現在のオフィス・コンピューティングを支える多くの概念や技術を具現化した「聖地」です。
しかし、ゼロックス自信はそれらの技術のほとんどを商品化せず、結果としてマック、ポストスクリプトなど他社で実現され、一世を風靡しました。
アップルのジョブスなどにより、このことが伝説として伝えられ、「大企業の間抜けさ」を語る一つの定番ともなっていますが、本書はこの伝説をより客観的な切り口で検証し、会社の問題はもちろん、科学者側の問題、時代的背景も含め、PARCで何があったのかをリアルに伝えてくれます。
ジョブスがPARCを見学したのは2回、しかも訪問前から見るものの内容をほぼ知っていた、など、興味深い事実が多数紹介され、とにかく面白い一冊でした。
コンピュータの歴史について少し知識がないと難しい部分もあるかもしれませんが、登場する科学者のキャラクター、科学とビジネスを巡る歴史的事件の魅力満載の本書は、興味のある方には絶対お薦めです。
04/01/19 オトナ語の謎。 糸井 重里/編 ほぼ日ブックス/1365円 ★★★★★
▼私は「ほぼ日」の熱心な読者で、この「オトナ語」の連載をとても楽しみにしていました。自分も投稿しようと思ったのですが、意外と思いつきません。
しかし、投稿されたオトナ語を見ると「そうそう!それよく出てくる!」と爆笑。この、改めて思い出そうとするとなかなか出てこないところが、オトナ語の極意であり「謎」と銘打つ所以ではないでしょうか。
用語解説のみならず、そこから紡ぎ出されるサラリーマンの悲哀の数々…断りたいけど断れない、悪いのはそっちだけど言っちゃぁいけない…が、面白くてやがて哀しい限りです。
以上の拙文によりまして、恐縮ではございますが、「オトナ語」ご紹介文のいまいまの時点でのドラフトとさせていただきたく、そういうことでひとつ、よろしくお願いいたします。
03/12/23 [DVD] たそがれ清兵衛 真田広之/宮沢りえ/主演 SHV /4700円 ★★★★
▼山田洋次監督の初の時代劇ということで、おっかなびっくりで観ましたが、多数の賞を獲得するだけのことはある、素晴らしい作品だと思いました。

たくさんの方のレビューにあるように、ナレーションが多いことや、劇場でなく家のテレビ画面で見るには暗いシーンが多いことは私も気になりましたが、リアルさへのこだわり、魅力あるキャラクター、抑えた美しい演技があるので、些細な欠点でしかないでしょう。


もちろん現代人が解釈し、現代人に向けてのメッセージを込めるのが映画として当然ですから、「リアルと言いながらここはおかしい」といった矛盾の指摘はヤボだと思います。

いい腕があるのに出世を目指さないのは馬鹿、境遇を受け入れるだけでは敗北者、という考え方に対し、つつましい幸せや身近な喜びを大切にする人は、現実にも大勢いると思います。ただ、清兵衛のように、前者の人間に利用され、使い捨てにされようとうするのは、悲しいことです。

清兵衛はひょんなことから剣の腕前を開陳してしまい、そのせいで謀反を起こした強者との死闘を強要されます。どんなチャンバラを見せてくれるのかよりも、もし清兵衛が負ければ残された家族はどうなってしまうのか、心配でした。
監督のメッセージはそこにあるように思いました。
03/09/25 [DVD] 壬生義士伝 中井喜一/佐藤浩市/主演 SHV /4700円 ★★★★
▼南部藩を脱藩し、殺人集団・新選組に入隊した吉村貫一郎の壮烈な人生を描く感動的な作品です。
浅田次郎の傑作小説を原作にし、愛と義のためにひたすら戦う吉村に中井喜一、彼を愛憎半ばに見据える新選組の鬼・斎藤一に佐藤浩市、南部藩の実力者・大野次郎右衛門に三宅裕司を配し、幕末の混乱を必死に生きる男女の姿を描いています。
非常によい映画だと思いますが、残念ながら同じ原作のドラマ版があり、短い時間でまとめなければならない映画版は分が悪く、どうしてもきめ細かなドラマ版に軍配を上げたくなってしまいます。
特に残念なのが、新選組随一の殺人鬼、斎藤一に佐藤浩市というのは、ちょっとかっこ良すぎというか、優しすぎの配役と感じることです。
本物の斎藤がどういう人物であったかはどうあれ、ドラマ版の竹中直人の方が、狂気の剣豪をよく表し、またそれだからこそ最後の戦場で吉村にかける言葉が響いてくるのではないでしょうか。
(ちょっと老け役メイクも今ひとつですし…)
といっても、限られた時間で原作の哀しく激烈な雰囲気をよく再現している、感動必至の作品であると思います。
ぜひ原作、できればドラマ版と併せて鑑賞されることをお薦めします。
03/09/25 [DVD] 壬生義士伝 渡辺謙/高島礼子/主演 SHV /15200円 ★★★★★
▼数ある新選組映画・ドラマの中でも、いや時代劇全般を相手にしてもこれほど素晴らしい作品はなかなか見あたらないと思います。
もちろん原作がいいことがありますが、長時間ドラマということでたくさんのエピソードを含め、きめ細かな表現ができるので、中井喜一主演の映画版がちょっと比べられて可哀相ですね。
幕末の雰囲気、特に地方の庶民の暮らしと殺人に明け暮れる京都の狂気の対比、義と理と情のどうしようもない相克、そして人と暮らしへの愛…。涙なしには観られません。
とにかく長いので何回も観るわけにいかないというのが難ですが、堕落しそうな時、勇気が欲しい時に思い出したい、一級の作品だと思います。
03/09/13 「武士道」解題―ノーブレス・オブリージュとは 李 登輝/著 小学館/1700円 ★★★★★
▼日本の理解者である台湾前総統・李登輝氏が、自らの哲学の礎でもあった、新渡戸稲造『武士道』を解説し、失われつつある日本人の美徳の呼び覚ましを祈る渾身の一冊。武士の末裔であり、キリスト教に帰依して国際人として活躍した新渡戸氏と、戦前の日本の教育に感謝しながら台湾総統にまでなた李氏の魂の接点が「武士道」という価値観。日本人に対して、アメリカ都合のグローバリズムに押し流されることなく、日本の伝統・文化に基づく価値観で、世界に対していくことを期待しています。巻末に、来日が実現されなかった2001年の講演の草稿がついています。
03/09/05 沈黙の春 レイチェル・カーソン/著 青樹 簗一/訳 新潮文庫/552円 ★★★★
▼環境問題に関する古典的な名著。それにしても、1950〜60年代の話です。基本的に、害虫駆除の化学殺虫剤―日本でも広く使われたDDTなど―、除草剤の影響 について分析した内容です。今読むと繰り返しのデータが冗長で、 分かり切ったことをくどくど書いているように感じるのですが、当時としてはようやく明らかになった衝撃的な事実の数々なんだと思います。それと同時に、恐るべき環境汚染の影響が「分かり切った」と感じる今でも、化学薬品はもちろん遺伝子操作など、 完全に安全とは言い切れない技術が無造作に利用されていることにも恐れを感じます。短期的な経済原則に振り回されずに、人類の叡智の使い道 を、世界が真摯に捉える必要があります。
03/08/21 データで検証!地球の資源ウソ・ホント―エネルギー、食糧から水資源まで 井田 徹治/著 講談社ブルーバックス/940円 ★★★★
▼化石燃料は本当に数十年でなくなるのか、代替エネルギーの可能性は?また食料や水産資源の供給はこれからどうなるのか。環境問題や都市問題として語られる様々な「危機」を、データによって紹介する、たいへんわかりやすい一冊です。もちろん数値にはさまざまな利害組織の思惑が含まれていることも冷静に捉え、しかし私たちが的確な計画をもってこれらの資源を扱っていかない限り、子孫に対して重要な問題を残してしまうことを示唆してくれます。人間の英知たる科学技術を何に使っていくべきなのか、それを問うべき段階に達しているのだと思います。
03/08/15 ウェブログ入門−BloggerとMovable Typeではじめる 田口 和裕/ホリコシ ヒデミ/ばるぼら/sawadaspecial/著 翔泳社/2380円 ★★★★
▼Weblog=Blogの歴史と現状の解説、そして実践的な始め方がよくまとまっている入門に最適な一冊です。
無料ですぐ始められるASPの「BLOGGER」は、まさに本を開きながらあっという間に開設できます。自分のサーバーにセットする方式の「Movable Type」の設置法も丁寧で、ある程度のサーバーの経験があれば、本書だけで始められるでしょう(ただし、MTをホスティングで始める場合にはCGIが動くだけではダメで、DBを利用できることが必須なので、要注意です)。
非常に動きの速い分野なので、興味を持った方は、本書をスタート地点にWebで最新情報をチェックされるといいでしょう。
03/08/10 「超」整理法2 捨てる技術 野口 悠紀雄/著 中公文庫/552円 ★★
▼私は『「超」整理法1』の押し出しファイリングや、『「超」整理手帳』に長年お世話になっている野口メソッド・ファンですが、この「捨てる技術」は、ちょっと歯切れが悪く、実用度もやや落ちる内容だと思っています。
「発見的な仕事に向く」と断っているので、けして間違いがあるというわけではありませんけれど、普通のビジネスマンに応用できるものではないし、自宅でも何でもかんでも箱に入れて積んでおくということはできないでしょう。
パソコンの検索は有用ですが、今さら教わる内容でもなく、テクニックとしてもDOS時代の感覚が残っていて古いです。
巻末の『「捨てる!」技術』との戦いの部分が一番面白いところと言えましょうか…。
野口氏が個人的に試してきたことを開陳して一般化しようというのが「超」シリーズの神髄だと思いますが、この巻ではやや氏の仕事の特殊性が勝ってしまっているのかもしれません。
03/08/08 UC YMO Premium (限定盤) YMO/坂本龍一 Sony Music House/20000円 ★★
▼批判の多い問題作、ようやく届きました。今まで、予約通販でいろいろ購入した中で、もっとも発売までが長かったかも…?
パックを開いて、しばし「うーむ」。普段こういうアイテムを入手した時に感じる「ワクワク感」がないんですね。シャツとバンダナ、確かに超懐かしい、当時憧れのグッズだけど、何かむなしい。ずっと袋を破らないだろうし;;。(それとも、一回着て記念写真でも撮るかな?)
CDの方も、特に感動する部分は残念ながらありませんでした。ブックレットも目新しいところないし、教授のコメントも投げやりな(?)一言ずつ。
わかって買ったのだし、あまり悪口を言ってはいけませんが、個人的には「YMOの出がらしにいかに付加価値をつけるか苦慮の末の無理矢理な商品」という印象は拭えません。
03/08/05 「超」整理法1 押出しファイリング 野口 悠紀雄/著 中公文庫/552円 ★★★★
▼ベストセラーとなった野口氏の整理法論の改訂版です。
新書版の「超」整理法から10年が経っていたというのは改めて驚きです。私自身は押し出しファイリングに共鳴し、気が付くと10年便利に使い続けています。感謝です。
(ただ、会社の機密管理の関係で書類は机上に置けず、キャビネの中でやらねばならないのがやや難です。また、私は封筒でなくクリアフォルダに大型付箋でタイトルを付けて、横向きに置いています。オススメ)
というわけで、誠に古びることなく継続できる一般人向けの整理法なのですが、ゆえに本が改訂された意図が不明です。周りの利用者の声など入れてパワーアップされていると思いきや、肩すかしでした。
もちろんシンプルな手法と理論なので、いじくり回さない姿勢はいいと思いますが…。
簡単に始められて効果のあるこの整理法、まだの方にはぜひ読んで試して欲しい限りです。
03/07/28 リサイクル幻想 武田 邦彦/著 文春新書/660円 ★★★★
▼リサイクルの考え方自体は悪くないのだけど、今の日本が進めているリサイクルは、何となく環境に良さそうなイメージだけ与えて無理・ムダだらけで、早く他の選択肢を検討しないと破綻する…というのが著者の主張です。さまざまなデータを元に、大変わかりやすくこの考え方を展開しています。特に、最終章「来るべき循環型社会を考える」は深く考えさせられるメッセージとなっています。
再生紙が新品より高価だったり、回収ペットボトルが余剰しているという話をよく聞きますが、リサイクルのために車を走らせ機械を動かして石油資源を使っているという指摘は説得力があります。
「自然に回帰」はできない今、大量消費自体を見直し、デジタルを活用することによる新しい適応社会を作り、残していきたいと思います。
03/07/20 原子力神話からの解放―日本を滅ぼす九つの呪縛 高木 仁三郎/著 光文社カッパ・ブックス/848円 ★★★★
▼日本の原子力黎明期に関わり、後年は反原子力を力説した故・高木仁三郎氏による「なぜ原発はダメなのか」を平易に解説した一冊です。
本書が書かれたのが2000年7月、そして10月には氏は癌で亡くなります。
何となく怖い、ではなく、データで見た原発神話のウソがこれだけあるという事実は、ぜひ多くの人が知るべきだと思いました。
昨今の管理ミスやデータねつ造のニュースとあわせて考えると、便利な消費社会の行く末に待ち受けているしっぺ返しの大きさが本当に恐ろしくなります。
03/07/17 サイダーハウス・ルール〈上〉 〈下〉 ジョン アーヴィング/著 文春文庫/各728円 ★★★★
▼ラッセ・ハルストレム監督の同名映画の原作です。映画の脚本もアーヴィング自身が手がけていて、この重厚な長編小説のエッセンスを見事に凝縮しています。この原作には映画で省略されているたくさんの人物やエピソードが入っており、脚本化の苦労が思われました。
メイン州の田舎にあるセント・クラウズ孤児院。そこには望まぬ妊娠をした女性たちが孤児を残していったり、非合法の堕胎=中絶を施されています。固い信念で堕胎を行うラーチ医師に、いつしか助手となる"もらわれなかった孤児"ホーマー。しかし、ある日現れた若いカップルに惹かれ、ホーマーは師であり父であるラーチから離れていきます。
初めて孤児院から出た彼は、愛や苦悩、後ろめたさという世界のルールに触れていくのです。
孤児、堕胎、近親相姦などの重いアイテムを、数閏年に渡るラーチとホーマーの半生で描く本作は、アーヴィングらしい重厚な小説ですが、同時にさまざまなエピソードがどんどんページを進めてくれる、エンターテイメント性も高い作品だと思います。
03/07/17 サイダーハウス・ルール ラッセ・ハルストレム/監督 アスミック /4700円 ★★★★
▼ラッセ・ハルストレム監督にはまっています。『サイダーハウス・ルール』は、タイトルも意味がわからないし、孤児院の物語と地味な印象だったので食わず嫌いしていたのですが、観てみるとさすがに素晴らしい作品でした。
孤児院で"売れ残り"、青年になってしまったホーマー(トビー・マグワイア)と、彼を父として師として育てたラーチ院長(マイケル・ケイン)の、実の親子以上の愛情と確執の物語なのですが、途中でホーマーの旅が始まります。その行き着く先が「サイダーハウス」、つまりリンゴ園だったのです。そこで様々な事件が起こり、彼は愛と厳しさを知っていきます。
ジョン・アーヴィングの長〜い小説が原作なのですが、原作者自身が脚本を書き、とてもバランスの取れたストーリーに仕上がっ!てるのはさすがです。アカデミー脚色賞もうなづけます。
ただただお涙頂戴の感動物語ではなく、冷徹で厳しいエピソードが出てくるのが、原作者と監督の共通点ではないでしょうか。非常に深みのある作品だと思います。
03/07/12 日本のゴミ―豊かさの中でモノたちは 佐野 眞一/著 ちくま文庫/900円 ★★★★★
▼クルマ、衣服、パソコン、ビル…紙から原子力まで、私たちを取り巻くさまざまな「商品」を、廃棄・処分・再生という「静脈」産業の視点から見た、希有なルポルタージュです。
もちろん単純な「エコロジー」「リサイクル」の叫びではなく、佐野眞一氏らしい鋭い視点と綿密な調査で、さらなる消費のために都市生活から隠蔽されているゴミたちの現状が痛烈に伝わります。
1990〜91年の連載記事を1993年の単行本化、1997年に文庫化ということで、著者の言うとおり「高速資本主義」の現代ですから、内容的は特に数字や法律をはじめとして古くなっています。
しかし、その視点とメッセージはまったく古ぼけず、かえって巨大で切実な問題として目を開かせてくれます。
狭い国土の、また狭い都市部にひしめいて生きている日本人―個人と企業―にとって、廃棄物の現状を知り、子孫にその対策を押しつけることなく解決策をとっていくことは、何よりも重要なことでしょう。本当に多くの人に触れてもらいたい一冊だと思います 。
03/07/07 [DVD] アラバマ物語 グレゴリー・ベック/主演 ユニバーサル・ピクチャーズ/3800円 ★★★★
▼白黒の古い映画ですが、素晴らしい作品なので、多くの方にぜひお勧めいたします。
アラバマの田舎町に暮らすフィンチ弁護士親子。正義感のお父さんが黒人の弁護に立ったことから、一家と町全体を揺るがす事件へと展開しています。
子供の視点で描かれていて、最初はやや子供向けなのか?と思わされたけれど、まったくそうではありませんでした。人種差別、貧困、無教養というアメリカの暗部を描いた、重いテーマです。
素直に善悪を判断するという意味で、あえてグレゴリー・ペック演ずる正義の弁護士も相対視しているのではないでしょうか。
ちょっと頼りないように見せながら、実は強固な意志とスキルを持った弁護士のキャラクターは、いわゆるヒーロー像とは異なっています。映画のヒーロー投票で彼がトップに選ばれたは、今のアメリカが力よりもこんな静かな正義を望んでいるからなのかも知れません。
グレゴリー・ペック氏のご冥福をお祈りいたします。
03/03/23 会社はこれからどうなるのか 岩井 克人/著 平凡社/1600円 ★★★★★
▼まず、「会社」とはそもそもどういうものなのか、「法人」とは、「資本主義」とは何なのか、という点で、類を見ないほどわかりやすく、まさに"腑に落ちる"説明が展開されています。
これだけでも、今までたくさんの入門書を読んでも今ひとつ納得できていなかった私にとっては、満点の内容でした。
さらに、「法人名目説」vs「法人実在説」の普遍論争や、「株主主権」の崩壊、NPOの台頭など、一歩踏み込んだ部分も興味深く理解することができました。
何となく不安に思っていたり、本質とずれているんではないかと気になっていたことが、ズバッと氷解したような爽快な読後感です。
多くの人にぜひ読んで欲しい、おすすめの一冊です!
03/03/23 発声と身体のレッスン―魅力的な「こえ」と「からだ」を作るために 鴻上 尚史/著 白水社/1700円 ★★★★★
▼演出家の鴻上尚史さんによる、声と体についてのレッスン方法をわかりやすく紹介してくれる本です。もちろん、俳優のトレーニングをしている方に役立つように組み立てられたレッスンですが、普通の人にも大変役立つものだと思います。私は、たまたま職場が変わって、プレゼンなど声を使う仕事につき、何冊かの本を参考にしているうちに本書に出会いました。帯にも書かれているように、プロである鴻上氏が、「惜しみなく」テクニックを与えてくれていることに驚きます。
「無理なくイメージ通り」を目標に、発声と姿勢の癖に気づいて、直していく数々のレッスンが出てきます。簡単なものは、まさに本を置いてすぐに始められますし、少し難しいものでも、無理せずに進めていくための注意点や、うまくやるためのヒントが書かれています。
日常で、いかに自分や周りの人たちが「緊張」して固まった体で話したり動いたりしているかを知っただけでも目から鱗が落ちます。また簡単な練習でそれを自覚して、少しでも取り除き、「正しい発声」「正しい姿勢」に近づいていけるという、希望を与えてくれる本だと思います。
俳優や先生を目指しているひとでなくても、多くのひとがぜひ一度触れてみるといい一冊です。
03/03/30 マン・オン・ザ・ムーン―笑いの天才アンディ・カフマン ボブ ズムダ/著 角川文庫 ★★★★
▼正確には、本書はジム・キャリー主演の映画『マン・オン・ザ・ムーン』の原作本ではなくて、映画の制作とほぼ同時期に書かれたアンディ・カフマン伝です。
観客を怒らせたり退屈させても、自らの突飛な芸を貫く、不思議なコメディアンの半生をリアルに描いています。35歳の若さで亡くなったことも、実はネタでそのうち出てくるのではないか?などという男がいたでしょうか…。
カフマンの親友にしてライターのボブ・ズムダが、カフマンが亡くなって、秘密のままになっていたいくつかの事実を、映画で暴露されるより前に発表したいと、本書を著したそうです。
とにかくものすごいヤツだったんだな〜、ということが、映画の方がはしょったり、わかりやすくするために脚色している部分を含め、はっきりわかります。
03/03/08 [DVD] マン・オン・ザ・ムーン デラックス版 ジム・キャリー/主演 パイオニアLDC/4700円 ★★★★
▼サタデー・ナイト・ライブ軍団でも異彩を放つコメディアン、アンディ・カフマンの生涯に、誕生日が同じというジム・キャリーが挑む異色の伝記映画です。
ウケたり、ちやほやされるスターになるよりも、独特であること、不可解であることを目指し続けたカフマン。親や味方をも欺くイタズラ的イベントや、意図的に期待を裏切る演出などで、世間を騒がせます。このカフマンをジム・キャリーが好演!見ている方が不安になるような、不安定なキャラクターを見事に再現していると思います。
ダニー・デヴィートをはじめとして、実際の関係者が考証や出演で協力しているのも、伝記の厚みに寄与しているのでしょう。
特典映像は、メイキングもいいけど何と言ってもカフマン自身の映像が見所でしょう。「カフマンが乗り移った」と高い評価のキャリーの演技ですが、本物のブチキレ度はやはり尋常ではない!?
03/02/16 [DVD] JM―ジョニー・ネモニック キアヌ・リーブス/主演 東宝/6000円 ★★★
▼2021年、世界は謎の黒震病が蔓延し、全てはインターネットで接続されています。脳に情報を隠して密輸するジョニーは、いつもと雰囲気の違う客に、能力を超える膨大な情報を託されたため、巨大企業お抱えのヤクザに終われる羽目になります。
サイバーパンクの祖、ウィリアム・ギブスンの『運び屋ジョニー』が原作だけあって、脳をバージョンアップしてストレージとして使い「情報密輸」に使ったり、ハイテクが原因の難病、多国籍企業と日本ヤクザの癒着など、SFとして設定が抜群にいいと思いました。
また、運び屋キアヌ・リーブス、殺人サイボーグ牧師ドルフ・ラングレン、ヤクザ幹部たけしとキャストも良く、ストーリーにマッチしていると感じます。
ただ、そのキャラクターの活かし方が甘く、魅力が出ていません。アクションや特撮もメリハリがないのも残念なところ。
それにしても、当時容量320GBごときで慌ててしまうあたり、時代を感じますね。2021年だったら、320TBでも楽々かも…。
03/02/12 ネットコミュニティビジネス入門 ―ネットビジネス成功の鍵はコミュニティ・スキルの有無にあり 松岡 裕典・他/著 日経BP社/2800円 ★★★★
▼ネット上のコミュニティについての歴史や分類、問題点、ビジネスモデルなど、とてもよくまとまっていて参考になる一冊だと思います。
入門と銘打っているとおり、一つ一つはそれほど突っ込んでいないし、詳細な分析データが掲載されているものではありません。
ネットコミュニティは魔法のマーケティングツールでもなければ、悪の巣窟でもありません。的確な設計とケアを行っていけば、さまざまなビジネスの場で開花する可能性を持つ、すばらしいツールになると思います。
現在ではネットコミュニティそのものは無料が一般的で、ビジネスというイメージではありません。でも、これからたくさんのアイディアやツールが出てきて、ネットの持つパワーがビジネスとしても広がっていくことでしょう。本書は、そんな未来を感じさせてくれる内容でした。
03/02/11 [DVD] マジェスティック ジム・キャリー/主演 ワーナー/2500円 ★★★★
▼魔女狩りのような共産党摘発が吹き荒れた50年代米国。ジム・キャリー扮するハリウッドの脚本家がアカ狩りに巻き込まれ、自暴自棄で飲酒運転、事故の末、記憶喪失となり、小さな町に流れ着きます。町の映画館主が彼を見て驚きました。欧州で戦死したと諦めていた息子にうり二つだったのです。町の英雄の帰還にお祝いムードが爆発。しかし、FBIは行方不明の脚本家を捜していました…。
古き米国コミュニティの雰囲気が彷彿とされる、人間味に溢れた素晴らしい作品だと思います。あのジム・キャリーがすっかり二枚目のシリアス俳優になっているのには驚き。まわりの渋いキャストたちもとてもいい感じで、ちょっと不思議なストーリーを無理なく引っ張ってくれます。
悪気があってなりすましたワケではなく、信念を持ったヒーローと自分をだんだん重ね合わせる。そして迎えるラストは感動です。
03/02/08 [DVD] 少林サッカー チャウ・シンチー/監督 パイオニアLDC/3800円 ★★★★
▼もし少林拳法をマスターした超人的な連中がサッカーをやったら…?を見事なCGでギャグ映画として完成させた、稀に見る怪作品だと思います。CGを使うならこうやれ!ってな感じです。
サッカーのシーンはまさに「アラレちゃん」を実写でやっているような無茶苦茶さで、画面からまったく目が離せません。「この試合のどこがサッカーなんだ…」ってな気もしますけど、「次は何が出てくるんだ?」という期待に見事に応えてくれる大技の数々には、脱帽。
ただ、悪の表現に、リンチっぽい残酷さがあって、ちょっとだけ気になりました。家族映画ではないかも。
03/02/05 イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき クレイトン・クリステンセン/著 翔泳社/2,800円 ★★★★★
▼有名な本でしたが、ちょっと食指がのびず読んでいなかったのを、たまたまローレンス・レッシグ『コモンズ』に引用されていたので、久々に思い出してやっと触れることができました。
「大きな売り上げやシェアを持ち巨大」というだけでなく、優秀なマネジメントや組織に支えられた欠点のないような企業が、時として新しい技術の採用に失敗して地位を落としたり、酷いときは倒産したり新興の会社に買収されてしまう。
そんな現象の説明を、これまでは「さらにミスをなくすマーケティング理論」や「最新のITシステムによるさらに優秀な分析」に向ける、つまり"結局は優秀さが足りなかったのだ"という残酷な話で済ませてきましたが、クリステンセン博士は新しい哲学で応えようとします。
(もちろん、「ここに書いてある理論を知らなかったからだ」という点では同じかもしれませんけど…)
目から鱗が落ちるような痛快な内容ですし、また闇雲に上を上を目指すことが企業の本能だという神話にも、一筋の光を当ててくれているように思います。
巨大企業ならずとも、非常に参考になります。また難しい本でないことも、好感が持てました。ビジネス書が好きな方にはとってもお薦めです。
03/01/25 コモンズ ローレンス レッシグ/著 山形 浩生/訳 翔泳社/2,800円 ★★★★
▼レッシグ教授の『CODE』の続編・拡張編という内容で、『CODE』を先に読むと、理解が早いと思います。
インターネット上の世界は、エンド・トゥ・エンドにインテリジェンスを置く設計を選んだため、イノベーションを自由に推進する土壌となりました。さらに、物理的なコモンズ(共有地)が過剰な利用による荒廃を起こす可能性を持つ(=「共有地の悲劇」)に対し、アイディアはロウソクの炎のように共有しても減らず、逆に新しい利用法の可能性が広がっていきます。この考え方を、米国の初期の立法者たちがすでにはっきりと示していたというのは、大変興味深いことです。
人類が得たこのイノベーションのコモンズが、既得権益を持つ一部のロビイストたちによって攻撃され、文化や科学をさらに進歩させていくはずの可能性が、議論を経ていないあやふやな権利や一方的な契約によって失われていく、レッシグ教授はそういった「今、ここにある危機」を痛烈に描き出し、またバランスのとれた解決策を模索します。
翻訳の山形浩生氏の独特な口調がちょっと気になりますが、内容自体は、感情的に危機を煽るものではなく、バランスを考慮したきわめて冷静な議論で、好感が持てます。
米国で始まったこの「コモンズの危機」はもちろん他人事ではなく、政治、経済、司法の各面で論じられ、イノベーションを創出するインセンティブ、豊かな文化表現を維持するコモンズを獲得、維持していかなければならないと思います。
01/06/30 CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー ローレンス レッシグ/著 山形 浩生/柏木 亮二/訳 翔泳社/2,800円 ★★★★★
▼立花隆の『ぼくが読んだ〜』で取り上げ。民主主義とアーキテクチャーの暗澹たる現実と将来が語られます。貴重な書。
03/01/12 [DVD] カンダハール モフセン・マフマルバフ監督 ブロードウェイ/3800円 ★★★★
▼カナダに脱出していたアフガニスタン人の女性記者が、地雷で足を失っていたため残された妹から何とか届いた手紙に、「日食の日に自殺」というメッセージを見ました。彼女は戦いの続くアフガニスタンに戻り、妹を救う旅に出ます。
 アフガニスタンの現実を私たちに伝えてくれる、美しくも悲痛なロードムービーです。重たい作品ですが、しかしよく考えてみれば、「娯楽」大作と呼ばれている映画のように血しぶきと爆発とともに人が死ぬわけでもなく、不気味なエイリアンとの戦いで人類の存続が問われるわけでもないので、何が「娯楽」で何が「重たい」のかわからなくなりますが…。
 何とか彼女のガイドになりそうなのは、飢えと絶望の中にしたたかに生きる「天性の詐欺師」たち。適当な嘘をついて金を巻き上げようとする彼らを、文明の利器に囲まれてぬくぬくと生きている自分が批判できるのか。今の自分があそこに放り込まれたら、すぐ飢え死ぬでしょうけど、あそこで育てば、自分も天性の詐欺師になれるのかもしれません。
 私は、ひょんなことからこの監督や作品について教わり、触れることができて大変感謝しています。が、これを他の方に薦めて見てもらうというのは難しいですね。多くの方が、この作品に自然に出会って、その方なりの感想を持って欲しい、そんな映画だと思いました。
03/01/11 月面に立った男―ある宇宙飛行士の回想 ジーン サーナン/ドン・デイヴィス 飛鳥新社/2200円 ★★★★
▼著者・ジーン・サーナンは、ジェミニ9号、アポロ10号、アポロ17号と3度の宇宙飛行を達成しました。特にアポロ17号は今のところ人類最後の月面着陸であり、サーナンは記念碑的な宇宙飛行士と言えます。
本書は彼の海軍時代からNASA後までカバーした自伝です。もちろんメインは2回のアポロ。宇宙飛行士間の確執や、飛行を危うくした危機の数々など、裏話的なエピソードも多く、とても面白い内容でした。
ところで、この本はジャーナリストのドン・デイヴィスの協力で書かれ、原著のクレジットは共著になっています。翻訳では訳者あとがきに触れられているだけ。他にもこのような有名でない共著者への扱いは見かけますが、どうかと思います。
03/01/03 ムーン・ショット―月をめざした男たち アラン シェパード /ディーク スレイトン/ジェイ・バーブリー/ハワード・ベネディクト 集英社/2816円 ★★★★
▼『ライトスタッフ』で、米国で最初に選抜された7人の宇宙飛行士「マーキュリー・セブン」が登場します。本書は、そのうちの二人、アラン・シェパードとディーク・スレイトンによる、アポロの記録です。
米国人として最初に宇宙に飛びだしたシェパードと、アポロとソユーズのドッキングで最後のアポロ飛行を行ったスレイトンは、健康上の理由で地上勤務になった宇宙飛行士という共通項を持つ親友同士です。しかし、NASAで他の飛行士の管理をしながら、友情で支え合いながら夢を諦めず病気を克服し、ついには二人とも、宇宙行きを実現します。
特にシェパードは、アポロ14号で月面歩行を達成する5人目の飛行士となるのです。
アポロ全体の記録としても簡潔にまとまっており、一部誤訳や誤記があるものの、読みやすい一冊だと思います。さすがにアンドルー・チェイキン『人類、月に立つ』にはカバレッジの面で負けますが、何よりも二人の飛行士自身の体験談が豊富に織り込まれており、お薦めできます。
02/12/16 オンライン・コミュニティ―eコマース、教育オンライン、非営利オンライン活動の最先端レポート クリス ウェリー他/編 ピアソンエデュケーション/3600円 ★★★
原題"Online Communities: Commerce, Community Action and the Virtual University(2001)"。
インターネットを利用したコミュニティに関する論文集です。
AOLやGeoCitiesなどの商用コミュニティを扱った第一部、バーチャル大学など教育・学術コミュニティを取り上げた第二部(リチャード・ストールマンも一文を寄せています)、ネットコミュニティの位置づけと課題を論じる第三部から成り、いずれも興味深い内容となっています。米国の事例よりも南米やヨーロッパなどのものが多いのも、特徴的でしょう。
しかし、訳が悪いのかとにかく読みづらく、もったいないと言わざるを得ません。まるで機械翻訳したのをそのまま貼り付けたかのような日本語なので、もしかしたら原書を読んだ方がいいのかもしれません…。
02/12/08 地球から来た男 バズ・オルドリン/マルカム・マコネル 角川書店/2100円 ★★★★
原題"MEN FROM EARTH(1989)"。
1969年7月20日に、人類初の月面着陸を行い、ニール・アームストロングに続いて2番目に月面に足跡を記した宇宙飛行士、バズ・オルドリンの著書です(サイエンス・ライターのマルカム・マコネルとの共著)。
第二次世界大戦中のドイツ軍におけるV2ミサイルから、スプートニク・ショックによるソ連との宇宙競争、『ライトスタッフ』に描かれているマーキュリー計画とその後継ジェミニ計画、そしてアポロ計画まで、1970年までの米国の宇宙史を飛行士の目で記している、貴重な一冊。
ソ連との虚々実々な宇宙競争に重点を置いており、アポロ後、フロンティアを失い利益主義になった米国に対し、国際協力により再び長期的宇宙計画を目指すべきと批判します。
1960年代の技術で、人間が月に立って帰ってくるという、まさに最高の冒険的快挙。これがどのような熱意と軋轢の中で行われたのか、いつまでも語り継がれて欲しい歴史ですね。
02/12/05 暴走するインターネット―ネット社会に何が起きているか 鈴木 謙介 イーストプレス/1500円 ★★★★
▼2ちゃんねるや出会い系、廃人ゲーマーなど、一見サブカル系の話題を満載した本に見えましたが、読んでみると非常に深い内容でした。
ネットに象徴される、新しい人間関係やコミュニティを、最新の社会学理論で斬ってみようという、意欲的な文章だと思います。
ネットに限らず、情報の過多、可能性の過多による「偶発性の増大」からくる不安があり、それに対処する手段として、新しいコミュニケーションが模索されているという論点は、うなずかされます。
ネットでは「公と私」が交錯してしまっていますが、新しい「公と私」の形が希求されているのか、また「ネタ化」「DB化」されたコミュニケーションは、新しい人間関係の答えなのか、それとも乗り越えていくべき病理なのか、今後のさらなる分析を期待します。
02/11/22 プロ作家養成塾―小説の書き方すべて教えます 若桜木 虔 中公新書/780円 ★★★★
▼まるで受験対策書のような、実践的な内容です。
あくまで、「新人賞の選考委員、審査員の目にとまること」「ダメ作品の先入観を持たれずに読み進めてもらうこと」を、恐ろしいほど具体的な手法で教授しています。
巻末の解説で鈴木輝一郎氏も書いていますが「とはいえ筆力が第一」であるのは事実でしょう。しかし、今のところこの傾向と対策が選考委員を支配しているのであれば、本書のアドバイスを参考にしない手はない!という感じですね。
本書は小説の読者にも役立つ面白い本だと思いました。新人賞の選考委員にウケるという上記の「コツ」は、売れっ子になってくると忘れられ、人気にあぐらをかいた「手抜き」の文章が跋扈することがあるそうです。本書を読むと、そいういった作品を見抜いたり、またつまらない作品に出会ったとき「なぜつまらないのか」を考えるタネを与えてくれます。
02/10/29 超文章法―伝えたいことをどう書くか 野口 悠紀雄 中公新書/780円 ★★★★
▼「超」シリーズも玉石混淆になってきましたが、この「文章法」はかなり本質をついた「面白く、ためになる」内容だと思います。
基本的にはレポートなどの「伝える文章」「説得の文章」の方法論なのですが、既存の文章法モノよりもアイディアの部分を重視していますので、いろいろな分野に応用できる考え方です。この「カスタマーレビュー」を書くような場合でも、意識しておきたいテクニックがたくさんありますね。
また、文章を書くにあたってのパソコンの効用に一章割いているのも特長です。「まず始める」ことの大事さは、ベストセラー『海馬』でも脳の働きという面から指摘されていますが、パソコンによって「とりあえず始める」ことの敷居が下がったのは間違いないと思います。
文章法の本は数々ありますが、入門編としても、また一通りやって行き詰まった方にもオススメできる両著です。
02/10/22 アポロは月に行ったのか?―Dark Moon 月の告発者たち メアリー ベネット/他 雷韻出版/1900円
▼基本的には「エセ科学トンデモ本」の一つだと思いますが、ちょっと立ち読みしてみたら、NASAが公表しているアポロ計画の写真の数々を突いて、月で撮影したものではないと証明しようとするスタイルは面白いと思いましたので、読んでみました。
型にはまった「陰謀史観」炸裂の上に、著者紹介には「幼い頃より超能力者」とか書かれているわ、米国のAmazonのレビューでも原著がコテンパンに叩かれているわ、まあ100%「トンデモ本」です。そうと分かって読むとちょっと味わい深い推理ものと言えましょう。でも原著が支離滅裂なのか翻訳が悪いのか、大変読みにくく意味不明な文章が多いのが難です。
それにしても、宇宙飛行士が撮ったにしてはあまりにも芸術性の高い写真があるのは事実ですね。月に行ったとしても、広報用の写真はスタジオで撮ったり、かなり加工してあるという可能性は、あるでしょうね。
02/10/16 忘れられた日本人 宮本 常一 岩波文庫 青/660円 ★★★★★
▼佐野真一氏の著書で宮本恒一氏のことを知り、この『忘れられた日本人』を推されていましたので、購入しました。
元は雑誌に連載していたものを加筆してまとめたもので、江戸時代末期から明治・大正を生きた地方の人々の風俗について、ナマの声を記録した素晴らしい本です。
平板化された「昔の農民」のイメージとは異なる彼らの生き生きとした証言は、過去の文化を遅れたものとして一般化することの悪弊を打ち砕いてくれます。また何よりも、日本中を歩き、過疎の村の老人たちからこれだけの話を聞き出すこと自体、宮本氏の真摯な姿勢が伝わってきます。
記録に残すこと=本の素晴らしさを感じさせてくれる一冊でした。
02/10/14 「超」整理手帳2003 【】【】【】【スペシャル版 アスキー/1333円/1500円 ★★★★★
▼私は、超整理手帳が出てから8年間、ずっと使い続けています。同じ手帳をこんなに使っているのは生まれて初めて。
差し込み式で無限に増減していく、システム手帳の良さと、リングなどがない軽さ、A4の普通の印刷で自分用のリフィルが簡単に作れる点と、自分で工夫したい人向けのアイテムだと思います。
問題点は、A4四つ折りの大きさのサイズ。男性なら背広の内ポケットに入りますが、女性が持ち歩くのがちょっと難しい形のようです。
意外とあちこちで利用者を見かけ、隠れた人気アイテムでもあるようです。
今年のバージョンは発売以来初の改良が施されていて、A4がフルに見られるカンガルーホルダは「待ってました!」。
オフィシャルホームページで、フォーム入力によりすぐリフィルが作れるというのも長年愛用してきたファンにはたまりません。
02/10/12 [DVD]ファイナル・カット アットエンタテインメント/4800円 ★★★
▼映画作りの仲間なのでしょうか。死んだジュードの葬式に親友たちが集まります。そこで未亡人が見せたものは、生前にジュードが録りためたビデオの編集版。ビデオを見る皆の姿も同様に撮影しながらの鑑賞は、異様なムードになります。それもそのはず、ビデオの内容は、集まった友人達の醜態を赤裸々に見せつける隠し撮りばかりなのです…。
記録映画風でもあり謎解きサスペンスでもあり、『ブレアウィッチ』や『メメント』といった、新しい匂いのする実験的な作品だと思います。死んだ「ジュード」をはじめとして、登場人物がすべて俳優の実名であるところも面白いですね。
隠し撮りで浮気や友達の中傷などがばんばん暴露されるという悪趣味な作品でもありますので、苦手な人はそうとうイヤな気分になるかも…。ジュード・ロウ目当てだけで見るのにはご注意ください。
02/10/06 穢れと茶碗―日本人は、なぜ軍隊が嫌いか 井沢 元彦 祥伝社ノン・ポシェット/562円 ★★★★
▼著者・井沢元彦氏の代表作『逆説の日本史』シリーズを最新刊まで読んだ後、参考にと思って読みました。
内容は井沢氏の他の著作と重複が多い(そもそも井沢氏の文章は非常にくどいのだけど…)ですが、日本人の「穢れ」信仰からくる軍隊・戦争忌避について、一本にまとまっています。これと『言霊』シリーズで、ほぼ井沢氏の日本人論の骨子が完成していると思います。
説明の中には、都合のいい部分もあるし、すべてが穢れと言霊で説明できるとは思えませんが、少なくとも軍事・防衛に関する日本の曖昧な姿勢は、明快に料理されていると感じます。
ただ、これが日本人文化の特徴だと認めたとして、それを直すという考え方はあり得るのか、その考え方自体が「和」の撞着になっていないか、気になります。外国人には理解不能だということは、井沢氏自身が認めているのですから…。
02/10/03 [DVD] クレイドル・ウィル・ロック PI,ASM/4700円 ★★★★
▼1937年のアメリカ。大恐慌の後遺症で街に溢れる貧困と、仲間をも告発する共産党狩りに揺れる厳しい時代に、一人の音楽家ブリッツスタインが書いた社会派ミュージカル「クレイドル・ウィル・ロック(揺りかごは揺れる)」を、若きオーソン・ウェルズら芸術を愛する人たちが苦闘して公演を目指します。実話を元に感動作。
役者もエミリー・ワトソンやジョン・キューザック、ビル・マレーなど面白い人たちが出ていますが、演じられるキャラクターもオーソン・ウェルズをはじめ新聞王ハーストや富豪ロックフェラー、画家ディエゴ・リベラなどそうそうたる面々です。
富豪たちが道楽で語る芸術と、芸術家やそのタマゴたちが真摯に目指すそれとが対比され、また自由への戦いか従属の安定かという社会的なテーマが、一つのミュージカルに集約されて描かれているのが秀逸だと思います。
ただ、たくさんの人物により複数の話が並列で流れ(それぞれ関係はあるのですが)、煩雑でわかりにくい面は否めません。当時の米国の情勢や著名人たちについて予め知識がないと、あれよあれよと話が進んでしまうかも…(この点、DVDには人物説明が入っていますので、先に見ておくといいでしょう)。
02/10/01 [DVD] キリング・フィールド ビーム・エンタテイメント/3800円 ★★★★★
▼70年代のカンボジアで、ニューヨークタイムズの特派員として活躍していたシドニー・シャンバーグ。助手として友人としてかけがえのない存在になっていたカンボジア人のプラン。クメール・ルージュのプノンペン占領により、フランス大使館に逃げ込み脱出を計りますが、奮闘むなしく別れ別れになります。
そして、シドニーは米国(そびえ立つWTCが懐かしい…)で最優秀記者賞に輝き、プランはクメール・ルージュの強制路動キャンプで「地獄の平和」にのたうち回ります。
実話を元に、またプラン役として実際にカンボジアで辛酸をなめたハイン・S・ニョールが素人とは思えない素晴らしい演技(アカデミー助演男優賞)を見せる、感動的な作品です。
R指定以上にしたくないために残酷シーンを抑え、甘いという批判もあったようですが、カンボジア難民たちには、そうであってもリアルに事実を描かれたことを感謝している声が多いとも言います。
プラン役のニョールは、米国でストリート・ギャングに射殺されたそうです(ポル・ポト派の暗殺ではない模様)。クメール・ルージュから逃げ切った彼が「自由の国」で殺害されるというのも、悲しい皮肉です。
ドキュメンタリー風に淡々と描かれる中に、戦争、友情が巧みに織り込まれた名作だと思います。
02/09/29 [DVD] ヴィドック パイオニアLDC/4700円 ★★★
▼革命直前のフランスを舞台に、私立探偵の元祖と言われる実在の人物、ヴィドックが、鏡のマスクを被り見たものは死ぬという伝説の妖怪(?)と対決する、なかば探偵モノなかばオカルトという作品です。予告編やパッケージが非常におどろおどろしく、「怖そう」という感じはするものの、内容についての情報が乏しいので、期待してみた人とそうでない人で、評価が大きく分かれているものと思います。

ハリウッド作品の特撮で名を挙げたピトフ監督が、フランスで、国民的ヒーローを扱った作品を撮ったということで、フランスでは大人気だったようですが、ホームズの祖先のようなこの探偵ヴィドックに思い入れがない日本人の私には、ちょっと拍子抜けという感じでした。
「おはよう、フェルプス君…」の『スパイ大作戦』を知らずに『ミッション・インポッシブル』を見るような感じでしょうか。
パッケージなどが鏡の顔の男主体になっていることもありますが…。
映像はヨーロッパらしく、おどろおどろしい感じがなかなか良いと思います。謎解きとしてのお話もそれほど悪くないのですが、やはりヴィドックやフランス革命で、下地が頭に染みついているフランス人が見るのと、われわれが見るのではしっくりこないのもやむを得ないでしょう(日本の時代劇をフランス人が見るようなものですね)。
特に、メインたる鏡の顔の男の悪逆な魅力があまり伝わらず、悪役としてのキャラが立っていないのが残念でなりません。もうちょっと踏み込めば、けっこう怖いと思います。
2枚目のディスクがすべ特典映像で、本編を遙かに超える分量があるのが凄い。監督がよく喋る(^-^;)!
02/09/22 [DVD] アンダーグラウンド PI,ASM/4700円 ★★★★
▼ユーゴスラビア。陽気なブラスバンドを鳴らし練り歩く、酔いどれの「街の顔役」たち。そこにナチス・ドイツの爆弾が降り注ぎます。豪邸の広大な地下室=「アンダーグラウンド」に逃れた、不思議な「ファミリー」は、崩壊した動物園からチンパンジーを連れて逃げる飼育係、ドイツ軍将校におもねる美人女優…個性あふれる登場人物たちでいっぱいです。
時に裏切り時に命を賭けて助け合う、彼らの戦争がコミカルに、同時に悲哀とともにぶつけられる、切ない戦争映画です。
地下でレジスタンス活動を続け、生まれ、成長していく彼らですが、いつの間にか第二次世界大戦は終わっていたのです…。しかし、それを知らされず地下で生き続ける「ファミリー」。いつしかユーゴスラビアは次なる戦争=民族が殺し合う、内戦に突入していきます。
人間の欲望や残酷さ、親子の愛など、さまざまな糸が見事に寄り合わされて、またアメリカの単純な勧善懲悪とは一線を画するヨーロッパならではの戦争観で、深い感動を与えてくれました。『ライフ・イズ・ビューティフル』とともにお薦めの戦争映画です。
シニカルなストーリー、キャラクターの魅力の素晴らしさに加えて、全編流れる音楽!陽気さが切ないブラスバンドの音色が耳に残ります。
02/09/20 アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ
 モフセン マフマルバフ 武井 みゆき/渡部 良子/訳
現代企画室/1300円 ★★★★
▼『サイクリスト』『カンダハール』で注目されているイラン人映画監督・マフマルバフ氏による、イランや国際社会のアフガニスタンへの見方に対する批判です。
私も最初は、タイトルと著者が映画監督ということで、詩的なものを想像してこの本を手に取りましたが、あくまで冷徹に、また愛を持って、なぜアフガニスタンという「袋小路の国」ができてしまったのか、そしてアフガニスタンに対する見方の問題点を論じています。
仏像を砲撃したのはタリバンですが、タリバンは誰が何のために作り、なぜ内乱に明け暮れた国を統一できたのか、マフマルバフ氏の分析は非常に説得力があると思います。
さらに、100万人の餓死者より仏像の破壊が重要視される、報道の問題点についての言及が、イメージを生業とする映画監督の口から出ていることは、強烈な印象を与えられました。
ただ、ブルカについては、日本での最近の議論では、実は伝統衣装であり本人たちが嫌がっていない、という論調が多いですが、氏はかなり批判しています。
アフガニスタンについて知らないことばかりだった私には、とても目を開かされた一冊でした。ぜひ映画も観てみようと思います。
02/09/08 [DVD] コンセント アミューズビデオ/4800円 ★★★
▼田口ランディの小説第1作を映画化。ランディさんの実体験を下敷きに、餓死した兄の真実を巡って、心理学、シャーマン、オカルトが織り交ぜられた絶望と救済の物語となっています。
小説に比べるとどうしても軽くなってしまいますが、主人公ユキを演ずる市川実和子がとてもハマっていていいです。また、特殊清掃会社の清掃プロフェッショナル役の斎藤歩が、出番少ない役ながら劇場映画デビューとは思えない存在感でした。
エッチなシーンも多いです。でも、それらがサービス映像というわけではなくストーリーにしっかり導かれ、死の絶望に対する生に向かうエロスを感じるのが、いいところです。
とはいえ、原作からするとちょっと中途半端な映画化かな…ともったいなく思うのも正直な印象でした。原作を読んだ人にはお勧め。
02/09/06 [DVD] マルホランド・ドライブ ポニーキャニオン/3800円 ★★★★
▼ハリウッドを走るマルホランド・ドライブ通りを軸に、2人の美女の謎めいた出会いから、時空がどんどん歪んでいく「リンチ・ワールド」に突入していきます。
このDVDに含まれているインタビューでリンチ監督は、「音楽は言葉で分析してもしょうがないのに、映画はなぜか言葉による説明が求められる」と語っていますが、まさに音楽を聴くように、ミステリー、官能、そして不安を楽しむ作品なのだと思います。
また、2人の主演女優はとても魅力的で、いつものリンチ映画の不気味さに加えて、美しさから来る不安感を満喫できます。
謎解きの楽しさも、DVDならあちこちのシーンを見て、鏤められたヒントを探すことができますね。ちょっとした人物や小物に注目して見返すと…ますますリンチの「罠」にはまっていくことと思います。
02/08/29 100ぴきのいぬがかえる本 いしかわ こうじ 学習研究社/1400円 ★★★★
▼簡単に作れる「ペーパーわんこ」の型紙&写真集。デザインがものすごいカワイイくて、見ているだけでほのぼのとしてきます。
でも、この本を切り抜いてしまうのはもったいない〜。両面ものだから、プリンターで…というわけでにもいかないし。でも思い切って切り抜いてしまうべきですよね!
「ペーパーにゃんこ」もぜひ出して欲しいと切に思います。
02/08/09 [DVD] シャイン パイオニアLDC/2980円 ★★★★★
▼実在のピアニスト、ヘルフゴットの半生を描いた作品です。映画より後に書かれた書籍(『すべては愛に』角川文庫)読むと、かなり脚色されているようですが、"事実は小説よりも奇なり"を地でいく本当に感動的な名作だと思います。
鬼気迫るピアノ演奏のシーンは、見ている方がクラクラしてくる「凄さ」が見事に表現されていて、圧倒されます。
この映画と書籍に感動して、ヘルフゴット演奏のCDを集めまくってしまいました。正直言ってCDの方はちょっと…ですが。
お涙頂戴ではなくて、人間の素晴らしさ、芸術の巣晴らしさで感動的に泣ける、超オススメの作品。。
02/08/09 すべては愛に―天才ピアニスト デヴィッド・ヘルフゴットの生涯 ギリアン ヘルフゴット/アリッサ タンスカヤ 中埜 有理/訳 角川文庫/860円 ★★★★★
▼映画『シャイン』の原作とありますが、実際には本の方が後に書かれていて、映画のことも出てきます。
本書を読むと、映画の方がかなり脚色されていることがわかりますが、それはまあ当然のことで、ヘルフゴットの凄い半生や、映画の素晴らしさが損なわれるわけではありません。ぜひ、映画とセットで読んで欲しいと思います。
ヘルフゴットの演奏CDもたくさん出ています。ちょっと苦しい演奏で、名演とはお世辞にも言い難いですが、本書を読んでヘルフゴットのことをわかってから聴くと、とてもあたたかい気持ちで耳に入ってくるので不思議です。
02/08/07 凡宰伝 佐野眞一 文芸春秋/1619円 ★★★★
▼故・小渕恵三首相に密着取材した驚きのドキュメントです。
今さら読むのヘンですが、佐野眞一さんの『私の体験的ノンフィクション術』を読んでこの本を知り、「記者クラブの慣例を破ってインタビューに応じてくれた」というところに興味を持って、こちらも読んでみました。
同郷・群馬の福田、中曽根という巨人に挟まれて、冴えない庶民オヤジというイメージの小渕氏が、どうして首相になったのか、庶民どころか超貧乏だった父の代から”ブッチフォン"まで、よくここまで…という足で調べたノンフィクションです。
2000年5月の発売ですが、小渕氏が亡くなったのはその1ヶ月前。前書き、後書きにそのことに触れていますが、内容はあくまで「現職首相」の取材。そこがまた結末を知って読むミステリーのような感覚でした。
政治には疎い私ですが、他の佐野氏の著作同様、専門用語を抑えてあって非常に読みやすかったです。
02/08/04 [DVD] フォロウィング アミューズビデオ/2800円 ★★★★
▼『メメント』の素晴らしさに、その原点と言われるこの『フォロウィング』、見ないわけにはいきませんでした。
フォルム・ノワールの形を取り、『メメント』に確かにつながる切れ味の良さはさすがです。もちろん、トータルの出来の良さでは後作に譲りますが、限られた予算と活動範囲で、ここまでの凄い作品を作れるということが、ハリウッドだけでない映画の幅広さを表していると思います。
これからの方がどちらを先に見るか?は難しいところだと思いますが、やはり完成度の高い『メメント』を楽しんで、そこに至る習作として『フォロウィング』を見た方が、いいかもしれません(『フォロウィング』で練習してしまうと、『メメント』の心地よい混乱の度合いが半減してしまうかも…)。
 2本をセットにした「メメント コレクターズ・セット」も販売されているようです。
02/07/10 [DVD] メメント アミューズビデオ/3800円 ★★★★★
▼10分くらいしか短期記憶を保てない、そんな病気の主人公が、妻をレイプ殺人した犯人を追います。そんな想像もつかない状況を、見る人に追体験させてくれる凄い映画。
難しくて意味不明という声も多い『メメント』。でも、そんなに複雑じゃないと思います(特にDVDなら)。特典映像の監督インタビューでも出てくるように、基本的には時系列だからです(カラーの部分とモノクロの部分で入れ違ってるけど、ちゃんと分かれている)。
これと似た時系列編集映画では、『キャッチ22』とか『12モンキーズ』の方がずっと難しいと感じました。『メメント』では、答えがありますから。
それは置いても、いいストーリーですし、思想性もあります。
DVDには時系列順に並べ直したバージョンも入っています。私はこれを吹き替え版で見て、再確認しました。絶対に先に見ないように!。
脳が自分の都合のいいように認識をだましている、という説がありますが、この作品の凄いのは、記憶がなくて記録で代替していていても、やはり好きなように自分をだます、という希有なストーリーを映画化できている点。これ以外のシチュエーションでは難しいよなぁ。
新しい記憶が10分しか残らないと言う症状を、ウソっぽくなく、かつ主人公の一人称的表現で実現する…これはなかなか奇跡的な作品ではないでしょうか 。
02/08/01 私の体験的ノンフィクション術 佐野眞一 集英社新書/680円 ★★★★
▼民俗学者・宮本常一氏の「歩くドキュメンタリー」に感化された著者が、ダイエーや正力、出版界を斬るドキュメンタリーの尖兵として活躍していること自体が、素晴らしいことだと思います。
数々の著作を執筆するための調査、推理などを実例として、機上で専門用語をまき散らすのではなく、著者の言う「小文字」で訴える、格闘するドキュメンタリーの実際を見せてくれます。
ただ気になったのが、本書の直前に『だれが「本」を殺すのかPART2延長戦』を読んだところ、非常に内容が重複していました。というか、そちらは講演録なので、いたしかたないのですが、連続して読むとちょっと損した気分…。もし読むとしても、こちらが先ですね。
02/07/28 だれが「本」を殺すのか 延長戦 佐野眞一 プレジデント社/1,600円 ★★★
▼本書は、『だれが「本」を殺すのか』の"サブテキスト"です。やはり、本編の方を読んでから触れた方がいいでしょう。内容としては、講演、対談、「本コロ」への書評という3つの部分から成り、「本コロ」への反響や反論が展開されています。
しかし、残念なことに「本コロ」以降の業界の進展は見られませんし、有効な反論も聞こえず、「そうだよねー困ったねー」とみんなで納得してしまっている感があります。「本コロ」効果への期待は、それよりも、志ある関係者たちが「いや、オレは犯人じゃねぇ!オレが本を生き返らせてやるっ!」と決起することです。(唯一、著者が批判した「ダ・ヴィンチ」の"迎合"書評も「一つの価値あり」というところが、反論として面白いところかな…)
「本コロ」応援団としては興味深いこの続編ですが、スタイルとしてやむを得ないとは言え、あまりにも内容の重複が多く、佐野氏著作のいつもの充実感に比べ冗長でスカスカなのが気になります。もっと言ってしまえば、こういうものも、インターネット上で読めればいい、"不要な新刊"の一つではないかと感じるのです。
「延長戦」と銘打つからには、新たな戦線を切り開いて欲しかったと思います。PART-3が作られるなら、ぜひその点を考慮していただければと思います。
01/04/23 だれが「本」を殺すのか 佐野眞一 プレジデント社/1,800円 ★★★★★
▼作家から読者まで、本を愛する人なら必読の素晴らしいノンフィクションです。登場する「関係者」も凄い人物が多く、さすが佐野氏と唸らされました。(ただ、「延長戦」と銘打った2冊は冗長で、もっと新しい展開を待ってから出して欲しかった…)
私は、リアル書店もオンライン書店も図書館もかなり利用します(ブックオフとマンガ喫茶はあまり行きませんが)。大手出版社の本も中小のものも幅広く読んでいるつもりです。また、書店でバイトをして、大量の「返本」事情に触れた経験もありました。
不況不況とは聞いていても、その全てがここまで構造的な問題を抱えているとは、本当に驚きます。さらに、本を巡っては経済の視点と文化の視点があって、例えば再販制の是非一つを取っても、議論すれ違って解決の糸口がつかみにくいことは否めません。
本は人生を作ってくれることもあります。形態はこれからデジタルになっていくでしょうし(私はデジタルブック賛成派です)、著者と読者という関係も変化していくと思いますが、やはり信頼できるプロが選別し編集した「出版」という形は残っていくのではないでしょうか。
その未来に向けて、死にかかった本をだれが生き返らせるのか!それが本書を読んだ私たちに課せられた、緊急のミッションだと思います。
02/07/28 だれでも天才になれる脳の仕組みと科学的勉強法 池谷 裕二 ライオン社/650円 ★★★★
▼『海馬』や『記憶力を強くする』の池谷裕二さんによる、中高生に向けた勉強法の本です。
本書は、脳科学の視点から、人間の記憶の仕組みにのっとった効果的な「勉強法」を提示してくれます。非常に薄いブックレットながら、要点がとてもよくまとまっていて、説得力のある内容だと思いました。
試験のための一夜漬け的な勉強にしても、将来に役立てる学習にしても、それぞれ脳がきちんと処理するための道筋があって、それは頭のいい悪いではなくて誰にでも共通しているということです。
ただ、効率よく学習したことは長続きするだけでなく、他のことを学習するのにも役立つため、どんどん差がついてしまうというのも脳の仕組みから説明できるそうです。
多くの人が、詰め込み教育の苦痛から勉強嫌いになって本来の能力を活かせないとしたら、社会や歴史にとってもったいないことです。
本書は中学、高校生向けに書かれていますが、大人、特に親や教育者の方々には広く知ってもらいたい内容だと思います 。
02/07/23 サッカーの敵 サイモン クーパー 柳下 毅一郎/訳 白水社/2700円 ★★★★
▼「フットボールと政治」。W杯や欧州クラブチームが巨大化し、利権を巡る醜聞も、日本にも伝わってくるようになりました。というよりも、日本という市場も、フットボール経済に取り込まれたということなのでしょう。
本書は1994年W杯アメリカ大会直後に、また東欧やアフリカなど「不安定な国」を中心に書かれています。大統領からフーリガンまでさまざまな関係者へのインタビューにより、サッカーを巡る政治と経済の、不思議なからくりが展開されていきます。
いろいろな意味で、日本の常識が通用しないことを思い知らされる内容です。「面白い」と同時に「恐ろしい」。サッカー本としてだけでなく、文化論としても非常に興味深い一冊だと思います 。
02/07/17 実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ デビッド・A. カーター/ジェームス ダイアズ 岡松 きぬ子/訳 大日本絵画/3900円 ★★★
▼本書は、ポップアップ=「飛び出す絵本」で使われているテクニックを解説した、実用書です。しかし、ただ説明しているのではなく、一つ一つのテクニックを例示した実物をたくさん並べてあるという不思議な本になっています。大型の絵本の中に、何十もの小さな「飛び出す絵本」が張り付いているのです。
それぞれの説明用の仕掛けは、絵がなくて真っ白い解説用のものですが、簡単なものからだんだん凝ったものに進化し、順番にいじっているだけで楽しくなります。
今はパソコンとカラープリンターで、簡単に美しいグラフィックスが作れますから、これらのテクニックを使って、オリジナルの絵本やグリーティング・カードを作ってみるといいと思います。
02/07/10 [DVD] A.I. ワーナー・ホーム・ビデオ/2980円 ★★★★★
▼子供が不治の病で植物状態に。両親に試験的に与えられた「親への愛をプログラムできる」アンドロイド=デヴィッド。しかし、奇跡的に実の子が回復し、ロボット息子は不要に…。『鉄腕アトム』を彷彿とさせる、暗澹たる近未来ロボット寓話。
キューブリックがあたためスピルバーグが実現した作品として、また『2001年宇宙の旅』にも通じる難解な作品という観点があって、賛否両論となっているようです。
それもわかりますが、とにもかくにもたくさんの人がピュアに観て、考えて欲しい、いろいろな人の意見が聞きたい、そんな映画だと思いました。
非常に残酷な寓話で、よく議論の対象になっているラストも、いろいろな見方ができます。私はこのラストを見て、涙が出ました。「泣いた」と言うより、まさに「涙が出た」という感じです。「感動した」とか「かわいそう」「よかった」という個別の感覚はなくて、何かひとりでに涙がつーつーと出てきました。
一度見ただけではよくわからない部分もあったので、複線を探してもう一度見ました(今度は吹き替え版で…)。またラストのところで涙が出ました。
でも、いろいろなサイトでラストの解釈を見ても、あまりピンと来ません。
というわけで、どこがどういいのか説明ができないのですが、凄い作品であることは間違いないと感じ、いろいろな方のご意見をうかがいたいという気持ちでいっぱいです 。
02/07/07 根をもつこと、翼をもつこと 田口ランディ 晶文社/1400円 ★★★★
▼「田口ランディのコラムマガジン」で書かれた文章を中心に、2000年〜2001年のランディさんの動きにまつわるさまざまな事柄が、とてもピュアで、でも深みも感じさせてくれるエッセイ集にまとめられています。
メールマガジンに掲載された文章も、かなりリライトされたり後日談が加わっているので、既読の方にもお薦め。
「根をもつこと」…自分のルーツや確固たる足場を意識して生きること、と「翼をもつこと」…イメージを飛翔させて自由に生きること。
既存の哲学や宗教には激しい胡散臭さを感じつつ、人、自然、言葉の持つ無限の力に惹きつけられている、そんな根も翼も意識するランディさんだからこそ、軽薄vs重厚の二元論を打ち破って、広い人気を博しているのはないでしょうか。
私は、最後の「言葉の呪い」についてのトピックが非常に興味深かったです。誰かの言葉がいつの間にか自分を支配している…そういうことが多いと思うから…。誰にでもあることかもしれませんが、ランディ流にくくり出されると、まさに目からウロコです。
02/07/06 [CD] NATIONAL ANTHEM OF THE WORLD 2002 キングレコード/1905円 ★★★
▼2002年出場の32カ国の国歌が、グループ順に入っており、大会が終わった今聞き返すとはやくも懐かしさを感じました。大会でも演奏を行った自衛隊吹奏楽団の演奏で、ムードも試合前の感覚です。
32カ国国歌に加えて、FIFAアンセムが2バージョン入っています。こちらが、オリジナルに比べるとちょっと安っぽい演奏なのが残念。Amazonのレビューで、歌や歌詞つきでないことは納得した上で買いましたが、やはり欲を言えば歌が欲しいですね。
02/06/29 海馬/脳は疲れない ほぼ日ブックス 池谷 裕二/糸井 重里 朝日出版社/1700円 ★★★★
▼「海馬」と、脳学っぽいタイトルですが、対談スタイルと洒落たイラストのとても読みやすい本です。脳の研究者の池谷さんと、「ほぼ日」darlingイトイさんが、最新の脳学をネタに語るポジティブ人生論となっています。「若くないから今さら頭を鍛えてもしょうがない」なんて思いこみが、実は間違いだたという主張が、いいですね。
脳科学そのものにはあまり突っ込んでいませんので、その辺さらに知りたい人は池谷さんの著作などに進まれるといいと思います。(個人的にはラマチャンドラン博士の『脳の中の幽霊』がオススメ)
02/06/26 新・ゴーマニズム宣言 (11) 小林 よしのり 小学館/1200円 ★★★
▼相変わらずのよしりんパワー、そして左も右もない姿勢には敬服します。惰性で流されずに、厚生省問題にしろ今回の教科書問題にしろ、本来の目的に立脚し、自己目的化して変容していく組織と決別していく一貫性に共感を覚えます。
テロや戦争を、単純悪、単純善どちらとも捉えず、その時その時の情勢やその国の歴史の中で相対的に見ようというのは、考えてみるとあまりに常識的だと思います。しかし、そんな常識と乖離した主張が溢れかえっている現実に、一石を投じています。
ただ、従来、この「ゴー宣」を主軸に、さまざまな別冊や他のメディアで主張の補佐をしてきたと思うのですが、昨今、そちらがメインとなりつつあり、「ゴー宣」はその宣伝メディアと化している気がします。
もちろんファンは他の本も購読するのでしょうが、「主力商品」なのだから、「ゴー宣」だけで話が通じるよう、気を配って欲しいと思いました。
02/06/19 知覚の呪縛―病理学的考察 渡辺 哲夫 ちくま学芸文庫/1,000円 ★★★
▼田口ランディさんが文庫版の解説をしていたり、小説中に触れられているということで、この本に出会いました。
著者・渡辺氏の患者である女性、Sさんの症例を通して、まことに不可解な「没落した世界」の有り様を探っていきます。Sさんにとっては自分の世界は「ワラ地球」で、主治医の渡辺さんも「ワラ人間」。そして本当の(?)世界である「オトチ」と、その手がかりたる「オタカラ」を求めて今日も「トグロ巻き」をします。
Sさん本人も、その治癒を目指す渡辺さんも、そして本書を読む私も、まるでカフカの世界です。
実際の話ですから、劇的な結論を期待してはいけないのですが、最初の章から思わず引き込まれ、夢中で読み進めてしまいました。
ただ、文体が「精神医学論文」なので、読みやすいとは言えません。やたら注があるけど注を見ても疑問が解けるわけでもなし。
それと価格が高いのが難点。でも、貴重な著書を、多くの人の努力で文庫化したのでしょうね。そのことに感謝したいと思います。
02/06/30 モザイク 田口ランディ 幻冬舎/1500円 ★★★
▼↑『知覚の呪縛』の文庫版を読んだところ、『モザイク』がその内容を参考にしている、と後書きにあって、それにつられて読んでみました。
社会の変革が必然的に産む「ニュータイプ」というテーマは手あかが付いているように感じましたが、携帯、ネット、分裂症、新興宗教、少年犯罪と今風の道具をテンポよく切り出し、飽きずにラストまで引っ張られます。
面白いストーリーなので、無い物ねだりとはいえ、もうちょっとオリジナリティを加えてふくらませてくれたら、もっと共感できる本格的な作品になりそうだなーと思いました。
02/06/19 象の怒り 吉田 戦車 エンターブレイン/780円 ★★★
▼象が突然知性を持ち、人間を襲撃!アフリカ、インド、日本と人類を席巻する象たちの狙いを探り、孤軍奮闘する日本のスパイ、大月夏助の活躍で人類は救われるか!?
…って、く、くだらなすぎる〜。戦車節炸裂!
02/06/15 情熱 フィリップ トルシエ/ルイ シュナイユ/著 松本 百合子/訳 NHK出版/1,400円 ★★★★
▼ついに日本はW杯決勝トーナメント進出を果たしました!
本書は2001年12月と、半年前の発売ですが、まさにこの快挙への道のりが、示されていると思います。
アフリカから、日本という未知の国に旅立つことになった経緯、マスコミや選手との確執から、解任報道、選手評まで、さまざまなエピソードがトルシエ側の視点から明らかにされていて、興味深い内容です。
自分が激しやすい人間だと理解していたことが、意外でした。
サッカーファンはもちろんですが、異文化挑戦記としても面白く、お薦めです。
02/06/09 [CD] ダイヤモンドサッカー/ドラム・マジョレット ゼティマ/1,143円 ★★★
▼『ダイヤモンドサッカー』のテーマ曲のマキシシングル。1968〜1988年のテレビ東京の番組、視聴率はせいぜい1%…そのテーマ曲が2002年の今、CD化される。そのこと自体がすごく面白い!やったね金子サン、という感じです。曲自体はうーなつかし〜というだけなんでしょうが(^-^;)。おまけの放映リストと、金子さん&岡野さんの対談は貴重でしょう。これだけのためでも、買っておいてヨカッタ!
02/06/03 「超」一流の自己再生術 二宮 清純/著 PHP新書/660円 ★★★
「ほぼ日」のダーリンコラムで取り上げられていたので早速読んでみました。一発屋として消えていく選手も多い中、幾たびも自分を「再生」してバージョンアップ、新しい挑戦を続けているヒーローたちがいます。二宮氏ならではの「勝者の美学」の視点で斬っているのが気持ちいいです。文章は、『Number』誌などに掲載された記事を加筆したもの。取り上げられているのは、野茂、新庄、古田、高橋尚子、ベルデニック、石井和義、高橋健次、向井昭吾、長嶋、松井、小宮山、イチロー、他にコーチ論、阪神球団、MLBとプロ野球 。
02/05/29 テレビ局がつぶれる日 脇浜 紀子/著 東洋経済新報社/1500円 ★★★★
▼大阪・読売テレビの「女子アナ」が、ITに目覚め米国留学、旧態依然としたテレビ局を憂い、デジタル化に挑戦…というちょっと変わったテレビ本です。自分自身がネット業をやりながらテレビ局に関わってきているので、非常に興味深く…というか頷きながら読めました。とはいえ、テレビ局のインターネットへの取り組みは、会社によってかなり差があるようだし、本書の状況よりは徐々に理解されるようになってきていると感じます(東京と大阪の温度差かもしれませんが)。その部分はもちろん、留学論、等身大の日米文化比較のところもとても面白くて、「女子アナ」もなめてはいけないなあと反省m(_ _)m。
02/05/25 こんなテレビに誰がした テレビについて話す会/編 毎日新聞社/1262円 ★★★
▼愛川欽也、前田武彦などそうそうたる面々が結成した「テレビについて話す会」による、視聴率批判。ジャーナリストや広告主の意見も入っていて、興味深い対談やインタビューが多数あります。
制作者が悪いのか視聴者が悪いのかスポンサーなのか、みんな悪いのか、はたまたこれはこれでイイのか…。
「視聴質」なんてアイディアも出る反面、「この議論は20年前から変わってないんだよね〜」という意見も。
02/05/19 Eメールで市場を即100倍に広げる本―Eメールマーケティングの効果をつかむ工夫と方法 株式会社カレン 山内 善行/西田 徹 中経出版/1600円 ★★★★
▼EMM=Eメールマーケティングのコンセプト・基礎から、実際の運用・危機管理まで、わかりやすく解説しています。
メールマガジンなどに使用するツールやサービスの紹介や具体例もあり、非常に実戦的な一冊だと思います。初心者向けという面もありますが、これ以上の内容は、それぞれの事例ごとに変わってくるところでしょうから、一般向けとして過不足なくまとまった本と言えるでしょう。さっそくこの会社のメルマガを読み始めました(^-^;)。
02/05/15 テレビ芸能職人 香取 俊介/箱石 桂子 朝日出版社/1500円 ★★★★
▼主に、テレビ黎明期に映画から移ってきた、裏方の職人たちを15人、紹介します。
遠藤勝己氏(照明)、原田靖子氏(記録)、美山晋八氏(殺陣)、片山嘉宏氏(メイク)、高橋勝大氏(スペシャル・スタント)、小川晴子氏(トータル・フードコーディネーター)、福井崚氏(劇伴)、荒川洸氏(時代考証)、高野宏一氏(特撮)、飯田国雄氏(写譜)、川村正敏氏(カメラ)、山本泰治氏(小道具)、橋本正二氏(効果)、上生和代氏(衣装)、小林七郎氏(アニメ背景画)。
いずれも、こだわりと情熱でたたき上げてきた達人ばかりですが、ノスタルジックな感傷もあるとはいえ、昨今のマニュアル方式の仕事や若者、テレビ番組にそれぞれの苦言がちらりとのぞきます。
コンピューターなどの便利な道具は活かしつつも、本物の目や技術を残していく、そんな未来は描けないものでしょうか。
02/05/12 iモード社会の「われとわれわれ」―情報倫理学の試み 小原 信 中公叢書/1800円 ★★
▼何となくアヤしく感じている、「iモード社会」。情報倫理学という新しい視点から、現代の人間関係やアイデンティティの何が問題なのか、鋭く論じます。…といったん書いたのですが、読み進めるとやたら冗長で、何でもかんでもi文化のせいにして怒っている居酒屋オヤジ的な本でした。とりあえずお薦め撤回…(^-^;)。
「情報倫理学」として、携帯やインターネットが普及した文化での倫理を解いていこうとしています。
日本らしい「われ=私」と「われわれ=公」の都合のいい溶解、やり直し可能と勘違いする「リセット感覚」など、興味深い視点がありますが、全体として冗長で、また小言オヤジ的な「最近の若い者は…」口調の繰り返しが鼻につき、まとまりがありません。もったいないところです。小言のターゲットが、小言に耳を貸す者が出てくれば直る部類なのか、もっと構造的なものなのか、その見極めが必要ではないでしょうか。
本書では、年配者や障害者を、「見たくない他者」「うざったい他者」として切り捨てる思考を批判しています。しかし、著者自身が、そのような若者を「うざったい他者」として一方的に分析しているように思えるのが、残念なところです。
02/05/09 面白いほど成功するツキの大原則―ツイてツイてツキまくる頭の使い方教えます 西田 文郎 現代書林/1200円 ★★★
▼基本的にはよくあるポジティブ・シンキング本に近い内容です。しかし、流行りの脳学を混ぜたり、Jリーガーを意識改革させた実績などを混ぜているところなど、今までとちょっと違う、興味深い内容にしています。
「ツキ」という自由にならないものを、自由にできるヒトがいる、それは100人に1人だけど、自分がその1人かどうかは、やってみないとわからないし、またそういう希有なツイている人を目標として、真似してみるだけでも進歩する。また、ドツボの人はこんな行動パターン…それって自分に似てない?というわかりやすい思考ガイドになっています。
こんな本に出会ったんだからツイている…でもそれを明日から実践しないんだったら、あーそれはドツボ。そんな一冊です。
02/05/04 なぜITは社会を変えないのか ジョン・シーリー ブラウン/ポール ドゥグッド 宮本 喜一/訳 日本経済新聞社/2300円 読み中…
▼いやーいいタイトルの本ですねえ。パロアルトの研究者である著者が、IT=「絵空事」という、みんなが薄々感じていることをビシッと分析してくれます。まあ結局、すべては「人間」「社会」という当たり前の方向に向かっているわけですが。…また読んだら書きます。とりあえずお薦め。
02/04/23 猫になった山猫 平岩 由伎子 築地書館/1800円 ★★★
▼日本猫保存運動で知られる故・平岩米吉さんの娘、平岩由伎子さんが著者で、米吉さんの知識を受け継ぎつつ、独自の猫観を加えて、猫の生態を記録しています。ブラックバスやザリガニなど、外来種による日本独自の種の危機がありますが、日本猫ももうほとんどいないそうです。ちなみにうちの猫は完全にシャム猫が入っていて、日本猫とはほど遠い…。ちょっと文章がこなれていないんですが、猫好きにはお薦めできる一冊です。ただし、表紙がなぜ豚の子なんだー!確かに豚の子におっぱいをあげる人間のお母さん、っていい写真ではありますが、本の中身は猫なんだから…(^-^;)。
02/04/20 ホームページ・ユーザビリティ 〜顧客をつかむ勝ち組サイト32の決定的法則 ヤコブ ニールセン 風工舎/訳 エムディエヌコーポレーション /2800円 ★★★★
▼定番本『ウェブ・ユーザビリティ―』の続編。たくさんのホームページを作ってきましたが、実際には、さまざまな要求があるのでルール通りのユーザービリティを実現することは難しいものです。本来は、かなりのテストを行って、そのサイトならではのルールを作っていかなければなりません。とはいえ、本書のようなわかりやすいチェックリストが手元にあるのとないのとでは、大違いだと思います。前半はチェックリスト、後半は事例集になっていますが、どちらも実際のサイト作りにすぐ役立ちますし、すでにあるサイトのリデザインに威力を発揮します。ヤコブルールについては、デザイナー側からは批判もあるようですが、ネットユーザーが増え、コモディティ的な使い勝手が要求されているのも事実、部分的にでも、参考にしていく価値があるリファレンスだと思います。ただ、リスト的ですので、一冊目としてはお薦めしにくいです。できれば前作とともに読むといいでしょう。
02/04/20 クチコミはこうしてつくられる―おもしろさが伝染するバズ・マーケティング エマニュエル ローゼン 浜岡 豊/訳 日本経済新聞社/1800円 ★★★★
▼ここのレビュー自体もその一つであり、この本のテーマの「バズ」≒「クチコミ」。売る側も買う側にもとても大事な「口の端に上る」っていうアクションですが、これをわかりやすく分析している本です。
ただ、「こうすればバズは起こりやすい」っていうのはクリアだけど、その「こうすれば」を実現するのはまた大変だぞ…というところです。もちろん、やみくもに試すのに比べれば、意識的に「バズを起こす」努力をすることは大事だと思います。
あくまで、基本はしっかりした製品・サービスと、正直な情報提供にあるということですから、心理学でダメな製品を売ってしまおうという内容ではありません。念のため。
02/04/15 PowerPointでつくる企画書ベスト事例集 細野 晴義 翔泳社/2200円 ★★★
▼クチコミ主義の私ですが、もちろんいっつもクチコミがいいとは限らない(^-^;)。今回、Amazonのレビューの評価がひじょーに高いので買ったのがこの本。しかし、ちょっと期待はずれでした。ただ、看板に偽りありという感じで、いい本ではあります。実はこの本は全然「企画書ベスト事例集」ではないのです。企画の基礎から、実際の企画作業を通して、企画書作りを学ぶ。これにつきます。それも「この本を作る企画」自体を下敷きにして、企画のコツを伝えようというなかなかニクいコンセプトの本です。PowerPointについては、巻末でちょっとだけ基礎的な操作に触れている程度。それを期待している人は要注意!
02/04/07 非戦 坂本龍一+sustainability for peace 幻冬社/1500円 ★★★
▼9・11対米テロを中心に据えた、「アンチ米国評論集」です。「もちろんテロには賛同できないが」という但し書きがいちいち付いた…。非常に心を打つ文章も含まれていますし、「非戦」というコンセプトはよいと思いますが、米国に対してアンチになってしまっては、また同じことの繰り返しでです。ところで、短時間でこれだけの本を編集し、販売したのはすごいことだと思います。でも、その分支離滅裂で非常に読みにくい本であることも事実です。これは仕方ないですね。
02/03/31 あなたの会社が90日で儲かる!―感情マーケティングでお客をつかむ 神田 昌典/著 フォレスト出版/1500円 ★★★★
02/03/31 もっとあなたの会社が90日で儲かる!―感情マーケティングでお客をトリコにする 神田 昌典/著 フォレスト出版/1500円 ★★★★
▼とにかく読みやすく、すぐ真似したくなる楽しいビジネス書。当たり前のようで数字や理論に押されて忘れがちなことを、しっかり思い出させてくれるし、事例がとても卑近な点がまた親近感が沸いていいですね。ただ、確かに著者の指摘通り、いったん書店でこのピンクの表紙を手に取りましたが、正直言ってちょっと胡散臭かったのでその時は買いませんでした。Amazonのレビューを見て、評価が高かったので、改めて購入に進んだ次第。この著者の『