ホームページへ H'80 Article ご感想/ご投稿 '98.07.15 THE HORNETS'80 Web
英空軍博物館での夕食会

英空軍博物館での夕食会
国ロンドン北部のヘンドンにある英空軍博物館は、今年で創立80周年の伝統あるロイヤル・エアフォースの歴代使用機材をはじめ、各種装備や資料を収めた宝庫である。やや薄暗い照明の下で幸いストロボの使用は認められているが、展示品の損傷を防止するために三脚の使用には予め許可を得る必要がある。その他、当然のことながら場内での飲食は厳禁とされている。
 ところが今回ロンドンで開催されたある会議に出席したところ、初日の夕食会が何と英空軍博物館で行われるとプログラムに書いてあるではないか。こんな機会は今回を逃したらもう一生得られないのではないかと、早速出席することにした。


●夕食の前にカクテルを楽しむ。後方はカナディア・セ−バー4とポーランド空軍のMiG-15bis
 当日午後5時にウェストミンスター寺院近くの会議場から、チャーターバスでヘンドンを目指す。いつもの地下鉄ノーザンラインとは異なり、生憎夕方のラッシュで思ったより時間が掛かって到着したのは午後6時を上回っていた。まずは展示機を眺めながらのカクテルである。垂直尾翼を赤く塗ったファントムFGR2の脇にバーが設けられ、シャンパン、ワイン、ビールなどがサービスされる。今回は奥さん同伴でもよいので女性の姿が目に付く。航空関係者がほとんどなので、展示された機体について奥さんに熱心に説明するご主人も多い。
 それにしてもスポットライトを浴びた名機を見ながら飲むビールの味は格別である。
 日本だったらとんでもないということで、きっと許されないのではないだろうか。原則は飲食が禁止であっても、参加者が限定された大人であれば特例でパーティを認めるという柔軟な考え方は、きっと英国以外、特にドイツでは受け入れられないだろう。

V2とサンダーランドに挟まれて

●ショート・サンダーランドの前での夕食会。頭の上には爆弾が吊り下げられている。
お酒が利いてくる頃、ようやく食事が始まる。テーブルはバトル・オブ・ブリテン館に展示されているショート・サンダーランド飛行艇の周りに設営されていた。 この理由はケータリングを担当するのが、同館に隣接するレストラン「ウイングス」だからだ。キッチンから遠いとサービスが大変なので、最も近いところにした訳である。200人近い参加者なのでテーブルも20以上ある。私のテーブルはちょうどV2とサンダーランドの間で、上を見るとサンダーランドの主翼とエンジン、後ろをふり返るとV2が見える。 古いレシプロエンジン、特に星型エンジンはよくオイルが漏れるので、食事中に垂れてこないかと心配するが、そもそもオイルは入っていないようで一安心する。
 しかしながら、こうやって敵と味方に分かれて死闘を繰り返した記念物に挟まれて、世界各国の人々が食事を楽しむというのも奇妙な気持ちである。スピーチが終わるとバンド演奏が始まり、女性歌手による甘くせつない歌声が高い天井に吸い込まれていく。
 私はいつしかドイツ本土爆撃を控えて士気を高揚するため英国の基地で開かれたダンスパーティに出席しているような気持ちになった。気のせいか、展示機の周りには不安な気持ちを振り払うかのように騒ぎまくる英空軍兵士の姿が見え隠れしていたようであった。

最近の英空軍博物館

●順番待ちの行列ができているシミュレーター(奥の迷彩塗装)
今回の訪問は久しぶりだったが、初めてシミュレーターに乗ってみた。自分で操縦は出来ないので本当の意味でのシュミレーターではないが、トーネードによるグランドアタックレッドアローズの演技飛行を前方スクリーンの映像とGで体験させてくれる。いずれの飛行も操縦席に設置されたカメラで撮影された前方映像とその際記録された3軸方向のGを再現するもので、臨場感たっぷりの飛行を味わえる。それにしてもスコットランドとおぼしき渓谷をぬっての超低空飛行は、そのスピード感とお尻で感じる垂直方向のGが凄まじい。
 レッドアローズの演技ではやはり編隊のタイトさに驚く。常に変化しようとする僚機との位置間隔を一定に保ちながらの演技にただ敬服してしまう。圧巻は3機編隊の周りをソロ機がロールしながら直進するコーク・スクリュー風のマニューバーとお互いに反対方向からすれ違うオポジット・パスで、観客側から見るのと演技側から見る差の大きさに愕然としてしまう。
 ハードウエアはフランスのトムソン・トレーニング・システム社製の6軸制御で定員6名、1回券は1.5ポンドだが2回券は2.5ポンド、3回券は3.5ポンドに割引される。

 もう一つの見ものは一昨年復元された1925年スーパーマリーン・サザンプトン飛行艇で、まるでヨットのように美しい木製の胴体は工芸品のようである。1996年のMuseum & Gallery CommissionのConservation Awardを受賞したというこの展示は、プラットホームから機体の中を見ることができたり、外板の一部をカットして内部の骨組みを見せたりする工夫が凝らされている。

●胴体のレストレーションが終了して展示されているスーパーマリン・"サザンプトン"飛行艇(1925)。1984年から11年かけてレストアされた。これは木製の艇体のMk.I

●開放式のコックピット。飛行機というより船の操舵室に近い

●胴体の一部をカットして内部構造を展示している。

●スーパーマリン・"サザンプトン"飛行艇(1925-36)

●パナビア・"トーネードGr.1"。これはプロトタイプの第2号機(XX946)で、1979〜94まで15年間使用された。

●インド、パキスタンの核実験で再び核兵器に関心が集まっているが、トーネードGr.1の横に展示されていた自由落下型核爆弾WE177(1966-98)。直径42cm、長さ284〜338cm、重量は272〜431Kg。1998年3月に英空軍から撤去された。


 ポンドが一昨年の1ポンド160円から今回は245円にまで高騰して英国旅行はすっかり割高感が強くなってしまったが、英国の航空ショーと航空博物館は少々無理しても見る価値は十分あると思われる。大きいものから小さいものまで入れると両者とも100以上あり、どこに行くべきか悩み多き選択に迷う至福の時を味うのはあなたです。
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