ホームページへ H'80 Article ご感想/ご投稿 '98.05.28 THE HORNETS'80 Web

Photo by Uni

UH-60FLT
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Text: IKE
Photo: Uni/ Diagram: Tack

 救難隊へのUH-60Jの導入以降、航空祭において、その優れた機動性を発揮したデモフライトが行われるようになり、航空マニアにとって従来、戦闘機やブルーインパルスの展示の間の「息抜き」のように捉えられていた救難隊の飛行展示が、俄然注目を浴びるようになってきている。
 そのような状況のなかで、平成9年8月31日、美保基地航空祭に展示され新田原救難隊のUH-60Jが見せたデモフライトは、従来の救難展示から更に一歩踏み込んだ内容を含んでいたと考えられる。  簡単にではあるが、その機動を再現してみる。

■ マニューバー概略
 まずは抵高度でのホバリング状態から説明を始めよう。UH-60Jは、その位置から急速にノーズダウンすると、やや後退しつつ上昇に移り、更に機首を支点とした逆円錐形を描くように左旋回を実施(旋回中にも高度は上昇している)、180°向きをかえると、やや降下しながら前進飛行に移行し、離 脱して行った。

 UH-60Jの持つ運動性能を、見事なまでに発揮したデモフライトであった。パイロットの技量も称賛に値する。しかし、筆者の考えるに、今回のデモフライトの本当に注目すべき点は、救難隊が「戦場」を想定した飛び方を展示して見せた点にある(ここ数年、航空祭に足を運ぶ機会が少なかったので、以前から見られた内容であったなら、御容赦願いたい)。

■ 「想定」とは?
 筆者の想像するに、今回の設定は以下のような状況だったのではないだろうか?
 1) 要救助者は敵と接触中。または至近距離まで敵が接近してきている。
 2) 救出地点への進入経路は一つしかない。

by Tack
■ マニューバー解説
 それでは新田原救難隊のUH-60Jが見せた各機動について、解説を試みることにしよう。

ホバリング
 一目瞭然。要救助者の吊り上げ作業である。ホバリングの高度は、可能な限り低いほうが、ケーブルを巻き上げ始めてから要救助者を機内に揚収するまでにかかる時間が短くなるので、離脱機動を開始するまでの時間を短縮するという理由から、低い高度にしているのではないだろうか?樹木の頂に接近することにより、それを遮蔽物として利用することを考慮しているのかも知れない。
 空力的な見地から言えば、もし吊り上げポイントが背風でのホバリングを強いられるような状況であったとしたら、高度を低くすることで、地面効果を期待できるようになる。

ノーズダウン姿勢での上昇
 これについては推測できる理由は余り無い。もし、そのまま水平に近い姿勢で上昇に移ると、敵に対してもろに腹を見せることとなり、銃撃に晒される面積が増すことになる。更に悪いことに、パイロットの下方視界が得られなくなるため、状況の掌握が困難となってしまう。
 また、現在は無いが将来的にドアガンを装備した場合には、その射角とも関連するものと思われる。
上昇時にやや後退した点については、UH-60Jのパワーを示すためだったのかも知れないが、少しでも敵との距離を遠くすることや、パイロットの視界を確保するのが目的だったのかも知れない。

螺旋旋回
 旋回して向きをかえるのは、地理的な条件により退路が限られている場合を想定したものだろう。
 ヘリコプターはアンチトルクペダルを踏み込むことによって、その場で任意の方向へ機首を向けることが可能である。しかし、あえてそのような機動をとらずに螺旋状に旋回したのは、パイロットが脅威の状態を掌握し続ける必要性からだろう。ドアガンを装備した場合を考えると、この機動により対地制圧を継続しつつ離脱することが可能となる。

やや降下しながらの前進飛行、離脱
これは先に述べた上昇機動と綿密に関連している。
前進飛行に移行する際、ヘリコプターはメインローターの回転面を前傾させ、発生する揚力の一部を水平方向の分力とすることによって、推力としている。そのため前進飛行への移行時にはコレクティブピッチレバーを操作して全てのブレードの迎え角を同時に増して、揚力を増加させることにより、その垂直分力の減少分を補っている。つまり、エンジンのパワーを増して高度低下を防いでいる。しかしながら、進入路と退路が同じ場合には、進入時に向かい風であれば離脱時には背風となるなど、様々な厳しい条件が考えられる。
ヘリコプターの飛行性能に影響を及ぼすのは、風だけでなく気温、気圧など様々な要素があることは、読者諸兄が御存知のとおりである。
対地高度に余裕の無い状態から前進飛行へ移行する際に、高度の低下をきたすようなことがあれば、二次遭難となってしまう。
以上のような事態に陥るのを未然に防ぐために、正対風を受けた状態で高度をかせぎ、その後の高度の損失に備えているものと考えられる。
実際にやや高度を下げている点については、高度エネルギーを速度エネルギーに変換していると考えればよい。すなわち素早く速度をかせぐことによって、逃げ足を確保しているのである。

 以上は航空祭にて展示された飛行を一マニアの目で解釈したものであることを再度お断りしておく。
Photo by Uni  救難隊は戦闘機などの部隊に比べると地味な印象があることは否めない。しかし、その活動は私たちの生活に最も近いところにある。阪神淡路大震災の際に注目されたような活動だけでなく、離島からの急患輸送など日常的に地域住民の生活に密着した活動を行っている。そして彼ら本来の業務であるCSARについても、相当な技量を有しているものと推測される。
 来年の航空祭では、今年以上に彼らのフライトに注目してみて欲しい。


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